大船渡線BRT(陸前高田~陸前矢作)
次の13時29分発、陸前矢作行きのバスが来るまで10分少々待ちます。
みどりの窓口が設けられているものの、駅前が更地になっており、曇り空と強風も手伝って、とても寂しい雰囲気を漂わせていました。
ロータリーに停まっていたにもかかわらず、バス停には出発間際にやってきました。
乗客は私を含め2人で、あとは運転手の計3人を乗せたバスは、定刻通り出発しました。
当バスは栃ヶ沢公園、竹駒、そして終点の陸前矢作と3つしか停まりません。
目ぼしい観光地がないにもかかわらず、本数はおおむね1時間に1本あるのは、栃ヶ沢公園駅に陸前高田市役所があるからでしょう。
その役所は、震災から8年半経った今もプレハブの簡素な建物です。
乗客が1人降り、車内には私と運転手の2人っきりになりました。
バスは田園地帯を走ります。
基本的には一般道を走りますが、駅付近だけ専用道に入り、停留所に着きます。
かつての鉄道線の橋梁が断絶されています。
海岸線から離れていますが、津波で流失したのでしょう。
この辺りから鉄道線の路盤がくっきりと分かります。
再び鉄道線の路盤を活用した専用道に入ります。
ほどなく終点の陸前矢作駅に13時47分着です。
ロータリーになっていて、突き当りに待合室が設置されています。
BRTは先を行くことができず、陸前高田駅から海沿いに回って気仙沼へと向かうことになります。
折り返しのバスが14時35分と47分も時間がありますので、しばし駅周辺を散歩です。
道端に秋桜が咲き乱れています。
戸建ての住居が並んでおり、集落としてはある程度まとまっています。
踏切注意の標識ですが、もうここに列車が通ることは永遠にないんですよね。。。
その踏切の脇道に小さな神社があり、急な階段を上ってお参りをしました。
途中、クモの巣が張り巡らされていて、かなり大きなクモも見られました。
いったん駅に戻り、今度は別方向へ。
民家の庭先に立派な柿の木が立ち、たくさんの実を付けていました。
立入禁止区域まで路盤の上を歩いてみました。
気仙沼まで続く路盤を何かに活用してほしいなと思いたくなるほど立派です。
この辺りは林業が盛んですから、木材工務店とかが目に付きます。
トラックの行き交いも多いです。
周辺をウロウロしているうちに、急に雲がサーっと退いて、青空が見えてきました。
どうやら天気予報は当たったみたいです。
もう1つの出入り口を通って、駅に戻ります。
待合室には液晶のバス運行表示がありました。
ベンチも設置されているものの、虫が飛んでいて、とても中で待つ気にはなれず、外でバスを待ちます。
先に14時32分着のバスがやってきて、これが折り返しになるのかなと思いきや、誰も乗客がいなかったためか、ロータリーをぐるっと1周するなり、そのまま回送として元来た道へと走っていきました。
続いて、先ほど私が乗ってきて、47分もの間当駅に止まっていたバスがやってきました。
これが14時35分発、陸前高田行きで、やっぱり出発間際にならないと乗せてくれないんですね。
14時53分、再び陸前高田駅に到着です。
これでこの区間は完乗しましたが、前回の記事にも書いた通り、もう法規上は鉄道扱いではありませんから、達成感はさほど得られません。
とはいえ、旧線の廃線跡をこの目で見られたのは良かったかなと個人的には思います。
さて、せっかく陸前高田に来たわけですから、やはり「奇跡の一本松」を見ないわけにはいかないでしょう。
というわけで、次はそちらを目指します。(続く)
三陸鉄道リアス線(釜石~盛)、大船渡線BRT(盛~陸前高田)
釜石駅で結構な人数が降りていき、車内に若干の余裕をもたせて、列車は11時33分に出発しました。
今ほど完乗した宮古・釜石間に対して、この先はもう3度目の乗車ですので、新鮮味はそれほどありません。
恋し浜駅で8分の停車。
その間、多くの乗客達がホームに降りて、写真を撮っていました。
12時28分、盛駅に終着です。
久慈駅からじつに4時間23分もかかりました。
ホームに降りると、ちょうどセメントを積んだ貨物列車が目の前を通っていきました。
岩手開発鉄道という路線で、一般人は利用することができません。
そこまでのきっぷは持っていませんので、いったん改札口に出て自動券売機で買います。
他の乗客もここで観光はせずにバスに乗り換えるため、行列ができました。
なので、列のほぼ最後尾にいた私は席に座ることができませんでした。
もっとも、乗客同士密接になってしまうし、BRTも3度目なので景色はだいたい覚えていますから、座れなくても構いません。
後方の扉付近に立つと、後から乗ってくるお客さんに迷惑かなと思い、前の方が空いていたので、そちらへ移動すると、
「お客さん、感染症対策で前の方には来ないでください」
とアナウンス越しに注意されました。
たしかに前の席の所に「感染症対策のため、前の席は利用できません」という掲示物が貼られており、それなら仕方ないなと後方の扉付近に戻りました。
12時37分に出発です。
盛駅や大船渡駅付近に、いつの間にか新駅が設置されていて、もちろん地元の方の利便性を考えてのことでしょうが、とにかくちょこちょこと停まって、まどろっこしいものでした。
やがて、1カ所席が空きましたが、密接は嫌なので座らないでいると、
「立っているお客さん、安全のために席に座ってください」
とまた注意されました。
短時間に2度も注意されると、自分に落ち度があるとはいえ、さすがに萎えてきます。
それもアナウンス越しなので、車内にいる乗客にも聞こえていますから、晒し者もいいところです。
13時16分、陸前高田駅でそそくさと降りました。
当駅で降りたのは、じつは大船渡線BRTの支線(陸前高田~陸前矢作)を乗り残していたからです。
もっとも、法令上は「鉄道事業法」ではなく、「道路運送法」に基づくため、大船渡線といっても、鉄道ではありません。
だから、放っておいてもよかったのですが、せっかくの機会、どんな路線か見てみようというのも一興なので、乗ってみることにしました。
次の陸前矢作行きは、13時29分発です。(続く)
三陸鉄道リアス線(宮古~釜石)
9時46分に宮古駅に到着した盛行きの普通列車は、当駅で16分の停車です。
「浄土ヶ浜」の最寄りアクセスにもなっており、3回目にしてぜひ行ってみたかったのですが、この先の旅程のことを考えると、断念せざるを得ませんでした。
まあ、あんまりいい天気とは言えないし、もしバスが混んでいたら嫌ですから、諦めがつきやすいのではありますが。
とはいえ、当駅からの乗客が非常に多く、座席はもちろんのこと、通路にかなりの数の立ち客も出ていました。
月曜日でこれですから、週末になったらと思うと、空恐ろしい気になります。
そのような状況の中で、大変心苦しいですが、ここで久慈駅で買った「うに弁当」を開くことにします。
なぜなら、この後の旅程で昼食をとる時間がないことと、弁当の鮮度が落ちるのを避けるためです。
包みを開くと、中には蒸したウニが箱にたっぷりと敷き詰められているではありませんか。
ウニの下にはウニの炊き込みご飯がのぞき、添え物は沢庵とレモンだけ。
このシンプルさは、人の心に印象付けやすいですね。
さっそくひと口ほおばると、口の中でウニの味が広がります。
最後までウニを楽しめる贅沢な一箱でした。
観光客をぎっしり詰め込んだ列車は、定刻通り宮古駅を出発しました。
未乗区間ですから、どんな景色に巡り合えるのかワクワクします。
列車の速度は遅く、並行する国道を走る車とどっこいどっこい。
津軽石駅で保育園児たちが当列車に手を振って見送ってくれました。
海が見えても、三陸特有の複雑に入り組んだ地形のため、すぐに川沿い、さらには山の中へと入ります。
ひと山抜けると、再び平地、街中と景色は変わっていきます。
陸中山田駅に着き、ピカピカの駅名標を見ると、そういえばかつてJR山田線だったことを思い出させます。
もっとも、私はJR時代に乗っていませんから、実際に見たわけではありませんが、どんな駅名標だったのか、なんとなく想像は付きます。
当駅でも保育園児たちが手を振って見送ってくれました。
やはり鉄道は地域のシンボル的な存在なんですね。
見所なので、列車の速度を落としての運転です。
国道が山側になるので、車の往来に邪魔されることなく見ることができます。
うっすらと日が差してきましたが、まだ厚い雲に覆われている感じです。
吉里吉里地区は、震災報道などでよく見聞きましたが、実際に駅周辺を見ると、こんなにも住居が密集しているのかと驚きました。
以前バスで通った時は、そもそもルートが違うこともありましたが、大雨だったことも重なり、町の様子を見ることができませんでした。
鉄道とバスとで町の印象が変わるのもおもしろいですね。
トンネルを抜け、大槌に入って再び海沿いです。
といっても、津波対策のための堤防やらで海の様子は見えません。
次の鵜住居駅の裏側に、昨年ラグビーワールドカップ2019で使用された「釜石鵜住居復興スタジアム」があります。
両石を出て、しばらくすると右手からJR釜石線が近づき、11時26分、釜石駅に到着です。
当駅で6分の停車です。(続く)
三陸鉄道リアス線(久慈~宮古)
10月5日(月)。
ホテルの朝食をとり、午前7時半にチェックアウトを済ませました。
ホテル近くのコンビニに行き、昨日もらった1000円分の地域クーポン券で飲み物とおやつを買いました。
やはり残念ながら、外は雨模様。
できれば使わずに済ませたかった折りたたみの傘を開き、久慈駅へ。
自動券売機で盛駅までの運賃は、3780円。
片道に限り途中下車できる切符も同額でしたので、予定では降りませんが、一応そのサービスも付いているものを購入しました。
そして、久慈駅といえば、なんといっても駅弁「うに弁当」。
三陸でとれたウニを使ったものですが、原則1日20食しか販売されず、「幻の駅弁」なんて言われたりもします。
そんな駅弁に巡り合えるチャンスですから、駅に併設されている「リアス亭」というお店で積まれていた弁当を1つ購入しました。
盛行きの普通列車が留置線にスタンバっています。
2両編成だったら嬉しいですね。
ホームにはすでに高校生がズラリと並んでいて、跨線橋の階段にまで及んでいました。
先に八戸線が入線してきました。
当列車に接続するのでしょう。
続いて、盛行きの普通列車がゆっくりと入ってきました。
まさかの1両編成!
写真なんか撮ったせいで、ほとんどの席が埋まってしまいましたが、なんとか海側のボックス席を確保しました(向きは反対ですが)。
高校生のみならず、高齢者の観光客が予想外に多く、「Go to キャンペーン」おそるべしと思いました。
おそらく高校生は近くの駅で降りるのでしょうけど、観光客は比較的長距離を利用するため、少なくとも宮古駅までは混雑の状況は続きます。
その先は未知数ですが、終点の盛駅まで4時間も続くのだとしたら嫌ですね。
と、思っても仕方ないので、とりあえず目の前の景色を楽しみましょう。
久慈から宮古までの区間は2回目ですが、1回目のことなんかほとんど覚えていません。
だから、景色がなんだか新鮮に見えてきます。
久慈駅を出ると、すぐに山の中に入り、民家が見当たらず森ばかりのところを走ります。
陸中野田駅で、高校生たちは降りていきました。
混雑は少しばかり緩和されたものの、座席はほぼすべて埋まったままです。
海沿いに出ると、まだまだ東日本大震災の跡と復旧中の姿が見られます。
たしか大沢橋梁だっと思いますが、見晴らしの良い所で列車は一時停止してくれます。
雨は降っていないものの、海上には雲が広がっていて、寂しさを引き立てています。
もう1カ所の橋梁上でも一時停止してくれます。
明らかに地元向けというより観光客向けのサービスですね。
宮古までの区間は踏切が一切なく、トンネルと高架を多用した現代的路線ですが、スピードはおそく、時間がかかるのも納得です。
時々、反対列車との待ち合わせがあり、久慈方面の列車の様子を見ると、やはり観光客で混んでいます。
月曜日でこの有様ですから、週末になったらそれはもう恐ろしい具合なのでしょう。
でも、コロナ禍とはいえ、収入も確保しなければならない現状ですから、とにかく来てくれないことには、たちまち「火の車」に追い込まれます。
感染拡大予防と経済の両方を満たすのは、ジレンマですね。
列車は9時46分に宮古駅に到着。
ここで18分の停車です。(続く)
久慈市にて
午後5時前に久慈駅に着き、JRの駅を出て、駅前の様子を見てみます。
噴水が時間ごとに勢いが変わって、ちょっとした広場になっています。
どこにでも見かけるような地方都市という感じですが、NHK連続テレビ小説「あまちゃん」の舞台となり、その宣伝があちこちで見られます。
シャッターにも「あまちゃん」のイラストが描かれていて、殺風景な感じをちょっとだけ和らいでくれています。
さて、私が泊まるのは駅前のビジネスホテルで、事前にインターネットで予約をしています。
ホームページには「GO to キャンペーン」も実施しているとのことでしたが、なにぶんITに疎い私は、その手続きが分からず、面倒くさそうだったから、とくに申し込まずに通常の予約だけをしました。
それでフロントでチェックインを受けると、係の人から「Go to キャンペーン」の申し込みをしませんかとの声かけが。
私は申し込み用紙に必要事項を記入してそれを渡すと、「あとはこちらでやっておきますね」と優しい感じで言われました。
これで宿泊料金が35%割引されましたが、さらに1000円分の地域クーポン券も1枚もらいました。
岩手県内の飲食店で明日まで使えるとのことですが、残念ながら、市内で使えるお店はコンビニしかないとのこと。
明日にでも飲み物やお菓子を買って備えることにしましょう。
偶然にも金銭的な面で得した気分になりました。
ふと、隣のフロントで70代のおじいさんが係の人に、やはり「Go to キャンペーン」についていろいろ訊ねていました。
話を聞いていると、東京から来たそうで、もちろん私と同じ35%の割引を受けられるのですが、この爺さんはそれに納得しないのか、「これだけなの?」「他にもないの?」としつこく訊いていました。
その度に係の人が説明するのですが、仕事とはいえ、政府から急に降ってきたものを宿泊客に説明しなくちゃいけない点、大変だなと思いました。
さらに、爺さんは地域クーポン券についてもあれこれ聞き、分からないことや疑問に思ったことを訊くのは悪いことではないにせよ、程度という問題があるから、難しいですね。
私も年寄りになったら、ああいうしつこい感じになってしまうのでしょうか。
部屋に荷物を置き、しばらくゆっくりした後、夕食をとりに外へ出ました。
なるべく地元のお店を利用したかったのですが、この日は日曜日だからお休みしている所が多かったです。
それで、郷土料理「まめぶ汁」という幟が立っているお店に入ることにしました。
せっかく来たのだから、やはり地元の物を所望したい。
地酒「福来」を頼みました。
口当たりがよく、飲みやすいお酒ですね。
私は観ていないのですが、「あまちゃん」にも出てきたそうで、すいとんのような団子の中にクルミや黒砂糖が入っており、もっちりとした後、カリカリとした食感が楽しめます。
根菜類もたっぷり入っていて、身体に優しい味です。
その他、おつまみセットや短角牛のカレーを食べ、すっかりお腹いっぱいになってお店を出ました。
外はすっかり暗くなっていましたが、まだ雨は降っていませんでした。
5日(月)は雨のち晴れの予報が出ており、今日の調子だと雨は確実だとして、晴れは期待できそうにないですね。(続く)
八戸線
続いて、八戸駅15時15分発、八戸線の久慈行きに乗車します。
IGR線と同じ2両編成で、最近導入されたばかりのディーゼルカーです。
どこか電車っぽく見えるのは、京浜東北線に似ているからでしょうか。(ラインカラーが同じ!)
車内の座席は4人がけと2人がけのボックス席が中心。
私は海側の2人がけ席に座りました。
席の区画に必ず1人以上は座り、乗車率で言えば50%はあると見られますが、地元客の方がやや多い印象でした。
海沿いを走るため、上の荷物棚には緊急避難用の道具が置いてあります。
青い森鉄道の大湊行きの列車が先に出発し、その後すぐに当列車がゆっくりと走り始めました。
貨物線と並行します。
馬淵川を渡る手前で1本、渡る途中でまた1本と線路が分かれます。
前者は八戸臨海鉄道という貨物線で、数キロ先の三菱製紙まで延びています。
後者も貨物線だが、現在は休止中だそう。
川の前後で2本もの貨物線が分岐するというのは珍しい光景ですね。
橋を渡ると、そのまま高架が続き、本八戸駅です。
八戸駅と本八戸駅では、どちらが中心地か紛らわしいですが、本八戸が中心地です。
基本的に住宅街ですが、山側にビルや繁華街があります。
したがって、当駅で乗り降りする人が多く、車内の雰囲気がガラッと変わりました。
昔ながらの町並みを残した陸奥湊を過ぎ、海が見えると同時に工場群が出現しました。
鮫駅で反対列車との待ち合わせです。
観光列車「TOHOKU EMOTION(東北エモーション)」で、車内を見ると、たくさんの乗客で賑わっていました。
本来なら喜ばしいことですが、このご時世、はたして感染対策は大丈夫なのかと、複雑な気持ちにもなりました。
列車はいよいよ本格的に海沿いを走行します。
ウミネコの繁殖地「蕪島(かぶしま)」を見ながら、ゆっくり進みます。
やはり天気が良くなることはなく、雲に覆われた太平洋はどこか寂しい雰囲気を感じさせます。
しかも、夕方ですから、だんだんと暗くなって、一層寂しさを増すばかりです。
3年前に乗った時も、午前中とはいえ、やはり真っ白な曇り空でしたから、これで曇天の印象が強力に印象付けられました。
三陸の海岸は周知のとおり「リアス式海岸」ですから、砂浜は少ないです。
まして鉄道から見られる所はもっと少ない。
波はなかなかの大きさですが、そんな状況でも砂浜から釣りをしている人も見られました。
海が見られるのも陸中中野までで、そこからは山の中に入っていきます。
これがなかなかの秘境っぷりで、駅前を除くと、ほとんど民家が見えず、森の中を進む印象でした。
新型車にもかかわらず速度も遅く、険しいところなのかなと思いました。
陸中夏井まで来ると、住宅街に出ます。
待合室が北海道の無人駅で見られる客車の改造ですね。
久慈市街地に入りました。
16時57分、久慈駅に終着。
IGRいわて銀河鉄道
11時47分に盛岡駅に着き、トイレを済ませた後、IGRいわて銀河鉄道の改札口に向かいます。
元JR東北本線だった路線ですが、第三セクターに変わり、JRとは別会社となりました。
そのためなのか、盛岡駅ではJRとは別の場所に改札口があり、そこできっぷを買う必要があります。
私は八戸までの107.9km乗りますので、運賃は3110円。
この距離は、JRであれば1980円で済みますから、およそ1.57倍もかかっています。
実は先ほどの新幹線で当駅で降りずに八戸まで乗り通せば、あと1690円出せば済みました。
つまり、新幹線に乗るより在来線の方が1420円も高くついているのです。
新幹線よりも圧倒的に遅く、サービスが一気に落ちるのは言うまでもないですが、さらに運賃まで高いとなれば、傍から見れば乗るメリットは皆無でしょう。
それを承知の上で乗るのは、景色と地域貢献が大きいですね。
どちらも極めて主観的な要素ですが、新幹線ではトンネルばかりで味気ないというのがあります。
やはり鉄道旅行は普通列車でこそ旅情を十分に味わえるもの。
私は一度通ったことはありますが、改めて乗ることで記憶にとどめておきたい。
また、地域貢献については、コロナ禍で鉄道もかなり落ち込んでいますし、まして地方の小さな会社線となればより厳しいもの。
したがって、鉄道好きとしてはほんのちょっとでも地元に貢献したいという思いは持ちます。
見方によっては「上から目線」ととられるかもしれませんが、そういう思いで乗ります。
前置きが長くなりました。
さっそく列車に乗りましょう。
IGR線は1つのホームに0番線と1番線があり、ちょうど1番線から11時56分発の滝沢行きが発車しようとするところでした。
八戸行きは0番線からです。
車両はJR東北本線と同じもので、2両編成。
車内座席はロングシートと4人がけボックス席があり、幸いボックス席の区画が1つ空いていたので、そこに座りました。
乗客は少なく、さらに地元の人ばかりでしたから、私のように長距離を利用する人はまずいないと推察。
だから、1人で4人がけの席を占拠しても咎められないでしょう。
12時10分に盛岡駅をゆっくり出発し、JR山田線とJR田沢湖線、そして秋田新幹線と分かれ、列車は青山、厨川と停車。
地元客がどんどん降りていきます。
次の巣子駅は反対側の上り線が一段高い所にホームがあります。
このあたりは山間部で土地が狭いのか、上下線で高低差がある所を走っていきます。
空模様は雲に覆われ、雨が降るんだか降らないんだかはっきりしません。
スマホで雨雲レーダーを見ると、弱い雨雲がかかっているのですが、要するに微妙な天気なのでしょう。
毎度のことながら、私が東北地方を旅行すると、きまって良くない天候に見舞われるのは、「部分的雨男」なのでしょうか。
霧に包まれた森を見ながら、列車は北上していきます。
さて、ここで盛岡駅で買った駅弁を開き、昼食とします。
「八戸前沖鯖押し寿し」。
これは2年前、山田線に乗った時にも食べたのですが、美味しかったのでまた買いました。
これこれ!
脂ののった鯖はもちろんですが、シャリにも工夫があって、胡麻やガリ、梅が2貫ずつ仕込まれていて、さっぱりとした後味になるのです。
6貫だけでも1つ1つが大きく、鯖も分厚いので、食べ応えは十分です。
このご時世に車内で食べるのは憚れますが、ガラガラであればさほど気にしなくても良いでしょう。
いわて沼宮内を過ぎ、列車はさらに山間部の奥へと進みます。
右へ左へとカーブし、ゴォーっと軋み音を立てています。
その割に列車の速度はゆっくりというわけもなく、淡々と進んでいけるのは、元東北本線という大幹線ならではの路盤のお陰でしょう。
一方で、列車は2両編成なのにホームはその5倍ぐらいの長さがあり、持て余してしまっているのも負の遺産。。。
使われていないスペースに柵は設けられているものの、管理は大変そうです。
IGR線の終点、金田一温泉で、貨物列車待避のため、しばらく停車します。
ホームには1人しかおらず、ガランとしています。
そのうち貨物列車が通過し、当列車もすぐに発車しました。
トンネルを抜けると青森県に入り、川を渡って目時駅に着きました。
ここからは「青い森鉄道」に変わります。
当列車はそのまま八戸まで直通しますが、IGR線とは別会社なので、当駅を境にまた初乗り運賃が発生します。
こういうことが起こるから、運賃が高くつくのです。
いつの間にか雨が降っていました。
三戸から混むかなと思っていましたが、そうでもありませんでした。
結局、終始ガラガラのまま、定刻通り14時5分に八戸駅に到着しました。
次に乗るJR八戸線の久慈行きは15時15分。
1時間以上時間がありましたから、近くのカフェでコーヒーを飲みながら読書して過ごしました。
発車20分前にお店を出て、八戸線のホームへと向かいます。(続く)