ゆき丸の鉄道日記

鉄道旅行や雑記を綴ります。

山形鉄道フラワー長井線

3日目(6月3日)は、米沢駅スタートです。

この日のねらいは、山形鉄道フラワー長井線とJR陸羽西線の乗車です。

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※路線図は山形鉄道フラワー長井線のホームページから引用   http://flower-liner.jp/routemap/


今回の旅程づくりで最も頭を悩ませたのは、この長井線をどうするかでした。

長井線の終点、荒砥駅が独立した駅で、いわゆる「盲腸線」ですから、通常では往復することになります。

その往復にピッタリなのは、赤湯駅8時59分発の列車で、終点の荒砥駅が9時53分に到着し、およそ30分後の10時22分発で折り返します。

その後、赤湯駅11時29分着で、JR山形線が11時52分発と少々待ちますが、それで行くと山形駅12時25分着、さらに12時32分発の新幹線「つばさ177号」新庄行きに乗り継ぎます。

新庄駅到着が13時16分で、次の陸羽西線が14時14分と間が空きますが、昼食を済ませればよく、これに乗ると、余目駅15時5分着となります。




ここまではわりと首尾よく行けるのですが、羽越本線特急いなほ12号新潟行きが16時4分発と、また1時間待たなければなりません。

ただ、あとは私の住む富山へ向かって、信越本線えちごトキめき鉄道妙高はねうまライン北陸新幹線富山地方鉄道と順当に進めていけば、一応今日中に自宅にたどり着くことができますが、午後10時半過ぎとなって、まあ、確実に疲れますね。

では、長井線を1本前、赤湯駅7時44分発にすればいいかというと、そうは問屋が下ろさず、荒砥駅着が8時51分で、折り返しが10時22分発と、結局、同じ行程を踏まなければならなくなり、早起きした分だけ無駄になります。

どうも私の完乗計画に対して、「乗れるものなら乗ってみろ」と挑発するかのようなダイヤとなっていて、しばらく思案に暮れました。






できるだけ早く家に着きたい・・・

そう思って時刻表を眺めると、光明が差し込んできました。

それは長井線の終点、荒砥駅でバスを使うというものです。


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このルートには山交バスが走っており、長井線の到着時刻と合わせると、荒砥駅発9時17分発が見つかります。

これはつまり、長井線赤湯駅7時44分発で行けばよいことになり、荒砥駅着が8時51分ですから、24分待てばいいことになります。

しかもバスの山形駅着が10時で、新庄行きの新幹線「つばさ123号」が10時8分と良く、新庄駅着が10時54分で、次の陸羽西線が11時15分発とこれもよろしい。

さらに余目駅が12時2分着で、羽越本線特急いなほ8号新潟行きが12時9分と、絶妙をきわめています。

新潟駅長岡駅直江津駅、泊駅と、自宅へ帰るルートと接続時間も申し分なく、もしこれに成功したら、私がこれまで考案した中でも傑作の部類に入ります。

この喜びは誰かと共有したくなるほどですが、一方で、社会的にもギネスブックにも、「トリビアの泉」にも相手にされない無駄きわまる行為に、誰が耳を貸すのかと疑いたくもなります。





盲腸線」の終着駅から何らかの交通手段で別の路線へ乗り継いで時間短縮を図るというのは、鉄道ファンの間では常套手段で、「ワープ」とか呼んでいるそうです。

以前、三岐鉄道北勢線から三岐線に乗り継いだ時は徒歩で行き、今回はバスになります。

ときには船を使わざるを得ないこともありますが、私にとってなぜかタクシーは控えてしまいます。

いやべつに、法律で禁止されているわけではないですし、むしろそちらを使った方が時間短縮を図れるという面もあるのですが、高い運賃と目的地への直行というのが、どうも引っかかるらしく、面倒でも公共交通機関という縛りがあることで、乗り継ぎのおもしろさを高めてくれるみたいです。

乗り継ぎ手段は人それぞれですが、私はそう思って実践しています。







前置きがずいぶん長くなりましたが、とにかく私にとっての「神旅程」を成功させるべく、まずは米沢駅山形線7時21分発の列車に乗ります。


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7時38分に赤湯駅に到着し、改札を出た後、長井線のきっぷ売り場はどこかなとキョロキョロしていると、貼り紙に「車内清算をしてください」とのこと。

改札を通り、跨線橋を渡って、4番線に7時44分発、荒砥行きの単行のディーゼル車がアイドリングして待っていました。


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花柄のイラストが車両全体に散らされていますが、主張の強い色を使っておらず、控え目な印象です。

車内には部活登校と思われる高校生たちがたくさん乗っていました。




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フラワー長井線は、もともと旧国鉄長井線を引き継いで、1988年に開業した第三セクター路線。

沿線に花の名所が多いことから、この愛称が付いたそうです。

列車は基本的に置賜盆地の広い所を走行し、進行方向左側の遠くに、まだ雪を残した飯豊(いいで)山地や朝日山地を望みます。

南長井駅で高校生たちがどっと降りていきました。

副名が「長井高等学校前」と書いてあったので、ここの生徒さんでしょう。




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8時16分、長井駅停車。

案内放送されることなく、しばらく停車したまま、運転士さんがホームで時間待ちしているようでしたので、発車時刻をググると、8時30分と。

外の様子を見たいので、列車から降りてホームへ立ちます。



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小学生たちが描いたのでしょうか、おそらく「フラワー長井線」をテーマにしたものと思われます。


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ホームから見た駅舎です。

長井市中心の有人駅で、本社も構えています。

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国鉄時代の名残か、ホームの有効長が長めです。

今では単行か、せいぜい2両ですから、手に余ります。



8時30分に出発した列車は、次のあやめ公園駅でひとりのご老人が降りていきます。

公園までの行き方を聞かれた運転士さんは、ご老人に説明していました。

運転士さんの話ぶりがズーズー弁だったので、地元の人かと思われます。



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進行方向右手に長井あやめ公園を見ながら、列車は先へと進み、2つ先の白兎駅の前で、住民たちが花を植えていました。

黒いマルチに穴を空け、1つ1つそっと植えて再び土をやさしくかぶせる。

列車が発車すると、いったん作業をやめ、手を振る人もいました。





魅力的な路線とは、人によって定義が変わってくるでしょう。

ある人は車両の快適性、ある人は車窓からの景色、またある人は利便性・・・

もちろん、魅力的な要素が一つに限定されるというのでもありませんが、しかし、沿線地元の人々が鉄道のために活動をして盛り上げ、ささやかだけど、少しでも乗客を楽しませようとする。

そういった地域に愛される路線こそ、魅力的な鉄道だとしても、ひとつの考え方として良いように思います。




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鮎貝駅で、乗客がいよいよ私一人になり、貸し切り状態のまま終点、荒砥駅を目指します。


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先頭へ行き、前面展望を楽しみます。

荒砥駅手前の「最上川橋梁」は、明治期に建設された日本最古の鉄道橋として知られ、2008年に土木学会選奨土木遺産に選定されています。

だからでしょうか、実際に通ると風格があるように見え、「恐れ入りますが、通させていただきます」と、襟を正させる思いです。




列車はスピードを落としてゆっくりホームへ入線し、8時51分、荒砥駅着。

降りる際、私を「鉄ちゃん」と思ったのでしょう(その通り!)、運転士さんが「このまま赤湯駅まで戻られます?」と尋ねてきた。

「もし戻られるんでしたら、往復のフリーきっぷが安いですよ」と勧めてくれたのだ。

「いえ、次にバスで山形へ行くんです」と私が答えると、「そうでしたか~。戻るんでしたらフリーきっぷの方が安いんですけどね~」と残念そうに言いました。

飯坂線のときもそうだけど、東北の第三セクター路線は、運賃が安くなる方法を提示してくれるなど乗客にとても親切ですね。



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次は、バスでひと山越え、山形駅へと向かいます。(続く)