筑豊電気鉄道
乗り換え時間は8分。
この駅に来たのは今回が初めてで、勝手をよく解していませんが、先ほど乗った福北ゆたか線の車内から筑電の駅が見えたことから、それほど離れてはいなかろうと推測します。
ところが、私の見落としなのか、駅の不親切なのか原因は分かりませんが、JRの駅から黒崎駅前駅までの案内が見当たらず、連絡通路みたいなのがありませんでしたから、どこから行けば一番近道なのか戸惑いました。
出発時刻がだんだんと迫ってきている。
焦りを募らせた私は、ひとまず1階へ下りようと、そばにあったエレベーターを使って1階に下りました。
「コムシティ」という複合施設の中に、バスセンターと共に、筑電のホームがありました。
早足で向かいます。
もちろん昼食時間も入れてですが、たとえこの電車を逃しても、次の11時ちょうど発でもじゅうぶん間に合います。
でも、私はどうしても10時36分発に乗りたい。
これは、まずもって理解されないことなのですが、車両嗜好(しこう)という鉄道マニア特有の気持ちに由来します。
どの車両に乗っても、一度通ってしまえば、乗りつぶしたことに変わりはありません。
だが、車両通にもなると、困ったことに乗る車両にも妙なこだわりが出てきて、自分好みの車両をねらうようになります。
嗜好は人それぞれで、古い車両を好む人もいれば、ピッカピカの新車に一番乗りで行きたい人もいます。
車両数の少ない珍車好きもいるし、車内設備で選ぶ人もいます。
こういう性癖のために、中にはどうしても乗りたい(あるいは撮りたい)車両をねらって、ホームで何本もの電車を見送る強者もいて、一般の人々にはとうてい意味不明な行動に写るでしょう。
私はそれほど車両に精通しているわけではありませんが、新車でかつ数の少ない車両を好む傾向にあるから、車両マニアの末席に入るかもしれません。
こういう好みには理由がなく、ただそうなってしまったというか、ある種の生理的現象以外に、説明が付きません。
そういうわけで、2015年(平成27年)に登場した低床電車に乗ります。
筑電も「旅名人の九州満喫きっぷ」が使えますから、いちいち運賃を気にする必要はまったくありません。
時々、切通を通るものの、基本的に住宅街やマンションが目立ちます。
中間市に入ると、住宅街が少なくなり、代わって田畑が広がります。
筑豊平野を存分に進むといった感じですね。
11時11分着ですが、着いてもすぐにドアが開くわけではなく、運転士がいったん後ろの乗務員席に行き、後ろのドアからという変わった降り方です。
私は観たことないのですが、痛快愉快なコメディー仕立てになっているようで、ぜひ観てみたいですね。
それはともかく、10月末なのに暑く、ジャケットを脱ぎたくなるほどでした。
ギンギラリンの太陽に照らされて干上がりそうな気分なので、すぐにJR直方駅まで歩きます。
次に乗る列車まで、まだ30分以上あるので、駅前の商店街に入り、昼食を探します。
あまりお腹が減っておらず、簡単にとれるもので結構。
500円のパスタランチをやっているカフェを見つけ、そこに入りました。
丸テーブル席が数台あり、うち1台に2人のおばあさんが談笑していて、もう1台におじいさんが1人佇んでいました。
私がどこの席に座ろうか考えていると、その様子に気が付いたおじいさんが席を譲ってくれ、代わりに自分はおばあさんとの間に入って、談笑の交わりに参加しました。
お礼を述べた私は椅子に掛け、ランチを注文します。
接客に来た若い男性店員は、妙にたどたどしくも生真面目に私の注文品の確認をするので、変わった店だなと思いました。
料理が出てくるまでの間、そばの壁に貼られたお知らせを見ると、障がい者の就労支援の一環として雇っているそうで、どうりでさっきの店員さんが機械のような受け答えするんだなと腑に落ちました。
でも、とくだん接客には何の問題はないし、お会計の際にも、1万円払った私に9500円のお釣りを渡してくれましたから、いわゆる健常者との違いはありません。
むしろ今現在、働いておらず、それどころか鉄道乗りつぶしという愚かな行為をしている私より立派に見えました。
障がい者の社会進出はまだまだ発展途上ですが、今後もさらに広がりを見せるでしょうし、そうなってほしいと願います。