黒部峡谷鉄道(宇奈月~黒薙)
私が住む富山県の緊急事態宣言が5月29日(金)に全面解除されました。
その5日後の6月3日(水)がちょうど仕事が休みでしたので、久しぶりに旅行に出掛けようと思いました。
とはいえ、いくら緊急事態宣言が解除されたからといって、おおっぴろげに旅行することはできません。
そこで、比較的近距離にある黒部峡谷鉄道に行って、「新しい生活」に少しでも「新鮮な風」を入れたいと思います。
駅前に出ると、本来であれば多くの人の往来と車の渋滞で賑わうはずの道路が、ご覧の通り、それらの姿はありません。
冬場などのシーズンオフであれば、こういう光景もなくはないですが、シーズン中でのこれは、異常事態であることを実感できます。
おそらく、こんなことは初めてのことではないかと思われます。
やはり観光客の姿はほとんど見当たりません。
私が乗る予定の列車は9時21分発で、宇奈月温泉駅から6分しか時間がないのですが、さすがにこれなら急いできっぷを購入しても、間に合いそうです。
2番のりばに、欅平行きの列車が乗客を待っていました。
電気機関車2両、客車13両の計15両編成と、編成両数だけをみれば東京並みに長いです。
しかし、コロナの影響で6月1日(月)に運行を開始したばかりで、かつ平日の午前中ということもあり、乗客の数は極めて少なく、私が見た限りでは計10名ほどしかいませんでした。
そういうわけで、私が割り当てられた4号車の乗客は1人で、まさかの貸切状態でした。
もとより当路線では、感染防止のために、乗客同士の間隔を空ける「ソーシャル・ディスタンス」(私はこの言葉は社会的孤立を招くことにつながりかねない表現だと思っており、「フィジカル・ディスタンス」の方が適切だと考えている)対策をしていますが、もはやそんな必要すらありません。
開放的かつ私的空間と化した車内にマスクなぞ不要で、さっそく外しました。
私は当路線に乗るのはこれで4回目ですが、貸切状態で乗るのは初めてで、適切な言い方ではないのかもしれませんが、いったいどんな乗車旅になるのか、ある意味「楽しみ」でもありました。
※前回乗った記事はこちら
列車は定刻通り、宇奈月駅を出発し、左にカーブして黒部川を渡ります。
ほぼプライベート空間なので、身体を左右に移動して両側の写真を撮るなど、子供っぽい行為もお咎めなしです。
これから終点の欅平駅までの20.1kmを、およそ1時間20分かけて進みます。
表定速度(停車時間も含めた速度)は約14kmと、自転車並みです。
黒部峡谷鉄道はトンネルや覆道(シェルター)が多く、実は車窓撮影には不向きな路線だと思います。
これは似た環境をもつ大井川鐡道井川線とは対照的だなと感じます。
また、トンネル内でもカーブはあるので、車輪の軋む音が激しく、せっかくの自動放送(県内出身の室井滋が案内)が聞こえません。
エメラルドグリーンのダム湖に朱い橋はうまくマッチしています。
やがて、洋風の建物が見えてきて、そこから引込線が本線に近づき合流すると、柳橋駅です。
関西電力関係者しか利用できず、一般客の乗降はしていません。
こういう駅が線内に6駅あります。
川の鮮やかな緑と、山の緑が合わさって、移動するごとに緑の表情が変わっていくようです。
こんな景色ばっかりでつまらないと思う人もいるでしょうけど、私は細かい変化も味わい、楽しみたいなと思います。
川の上に架かっている細い吊橋は、人間用ではなく、サルが渡れるようにしているのだそうです。
この辺りのサルは、宇奈月温泉街どころか、私の近所にまで迷い込んできたこともありますから、行動範囲が広いなと思います。
だんだんと谷の切れ込み具合が鋭くなってきました。
赤い石が見えてきましたが、「仏石」だそうです。
列車は緩やかなカーブを描いた森石駅に停車しました。
「特別車両」と呼ばれる客車が留置されていました。
「3密」のうちの「密閉」構造のため、使われていません。
業務用の反対列車との待ち合わせをしてから、発車しました。
9時44分、黒薙駅に着きました。
有人駅で、黒薙温泉があるため、一般客の乗降ができます。
が、この時は誰も利用する人がいませんでした。
列車の旅はまだ続きます。(続く)