紀勢本線2、浮島の森
御坊駅前のカフェで、日替わり定食(手づくりチキン南蛮定食)のやさしい味に満足した私は、駅に戻り、4度目の改札を口を通り抜けて、3番のりばへ。
13時58分発、特急「くろしお11号」新宮行きに乗ります。
切目駅から岩代駅にかけて、千里の浜が見られ、一部の特急列車では徐行運転をしてくれます。
アカウミガメの産卵地と案内され、じーっと浜辺を覗き込みましたが、カメの姿はありませんでした。
まあ、産卵は夜ですもんね。
白浜駅はアドベンチャーワールドの最寄り駅で、大半の観光客はここで降りていきました。
残った車内はガラーンとしていました。
各座席には、「津波が予想される場合のお願い」が用意されています。
あまり想像したくはないですが、あらかじめ読んでおくと、いざという時、パニックにならずに済むでしょう。
16時38分、終点の新宮駅に到着。
次の列車が17時30分発と50分も空いていますので、事前にちょろっと調べた「浮島の森」に行きました。
徒歩10分弱と近いですね。
住宅街のど真ん中にちょっとした森があって、外から見ると、そこだけ異次元空間のような感じがします。
管理人さんに入館料を払うと、「説明はいいですよね?」と言ってきた。
何のことだろうと一瞬考え、すぐに「いや、ここ5時までなんですよ」と言われ、ちょうど閉まる前に来たことが分かりました。
あまり遅くなると管理人さんに申し訳ないと思い、すぐに中へ。
池の上に森が浮かんでいるようで、順路に従って、まずは外側を周ります。
カエルの鳴き声が夕暮れに響き、池の中にもいろいろな小さい生き物たちが泳いでいます。
池に生えた草に、緑色のトンボがひらひらと飛んでおり、ここの生き物たちにとってはまるで楽園のようです。
池を渡って、森の中へ進みます。
小島の東西は約96m、南北約55mとそれほど広くはないはずですが、道がくねくね曲がっているためか、妙に広く感じます。
虫たちが自由気ままに飛び交い、私はそれらを避けながら奥へ奥へと歩きます。
鬱蒼とした森にわずかな陽射しがこぼれ、とても住宅街にあるとは思えません。
再び外側へと出て、先ほどの入り口までぐるりと周ります。
ずいぶんと不思議な所で、管理人さんに「いろいろな植物や生き物が棲んでいるんですね」と感想を述べると、
「ここの植物は在来系だけでなく、北方系と南方系の植物が一緒にあるんですよ」
と教えてくれました。
どうしてこの森に北方系と南方系が混在しているのかは、いまだに解明されていないらしく、聞けば聞くほど不思議な所だなと思いました。
「すばらしい所ですね」と私が紋切り型な言葉を言うと、
「ただ、最近は外来種が入ってきてねぇ・・・。その駆除に苦労しますよ」
「誰かがこの森へ無断で放すんですか」
「それもあります。あとは台風とかで紛れて入り込んでくるんですよ。毎年、台風が来ては、外来種を見つけて追い払うの繰り返し。市の教育委員会の人がやってくれるんだけど、むやみに枝を切ったり薬をまいたりとかできないでしょ。だから、大変だねぇ。」
浮島の森は、国指定天然記念物であるから、その環境保全が非常にデリケートだ。
「今日はどちらから?」
「富山からです。」
「わざわざ来てくれてありがとうございます。」
駅へ戻る道中、管理人さんのやさしさと保全への苦労がずっと頭の中に残りました。
駅に戻り、17時30分発、特急「(ワイドビュー)南紀8号」名古屋行きに乗ります。
この特急列車は、先頭車両が前面展望ができ、かつ自由席ですので、なにか得した気分になれます。