ゆき丸の鉄道日記

鉄道旅行や雑記を綴ります。

札沼線

6月21日(木)。

ホテルの朝食を泣く泣く諦め、前日夜に着いたせいで駅までの道のりに苦労し、乗り遅れにヒヤリとしながらも、なんとか地下鉄南北線すすきの駅、6時34分発の電車に乗り、2つ先のさっぽろ駅へ。

階段を上がり、駅構内の駅弁屋「弁菜亭」で朝食用の駅弁を買い、10番線のホームへと上ります。




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この日から、いよいよ本格的にJR北海道の鉄道未乗路線に挑みます。

一発目は、ここ札幌駅から出る札沼線新十津川駅まで行きます。



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札沼線桑園駅新十津川駅を結ぶ全長76.5kmの地方交通線です。

ただし、運用上は、すべての列車が桑園駅の1つ前の札幌駅を起点としています。

路線名は札幌駅と石狩沼田駅を結ぶことから、「札」と「沼」をそれぞれ取って付けられましたが、新十津川駅から石狩沼田駅間は1972年6月に廃止され、名は体を表していない状態となりました。

JR北海道によれば、北海道医療大学駅から新十津川駅までの区間も、2020年をめどに廃止することが決まり、さらなる区間短縮に迫られます。

そして、メディアでもだいぶ取り上げられていますが、末端区間は1日1往復しかない絶滅危惧種で、朝食を諦めざるをえなかったのは、6時58分発の列車に乗らなければならないからです。

したがって、これを逃すと、私の場合、いやおうなく出直しを迫られるため、絶対に寝坊しないよう気を付け、おかげでベッドの中でも落ち着いて眠ることができませんでした。




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さて、6時58分発の石狩当別行き、6両編成の普通列車がゆっくりホームへと滑りこみました。

前日の千歳線快速エアポート」と同じ車両ですね。



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この列車は4号車に「uシート」という特急列車のような座席を設けており、快速エアポートの時は座席指定券を求められますが、近くにいた駅員さんに聞いてみたところ、乗車券だけで乗れるということでしたので、ありがたく利用させていただきました。

回転リクライニング式で、背もたれを少しググっと後ろに倒し、普通列車でありながら、なんとなく優雅なひと時を楽しめます。

しかも荷物置き場も用意されていて、大荷物を抱えている身としては、嬉しいですね。

地元の利用者も当然知っているらしく、高校生たちが堂々と乗り込んではゆっくりとくつろいでいました。





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列車は札幌駅を出発し、次の桑園駅函館本線と分かれると、しばらく高架のまま札幌市街地を駆け抜けます。

この日、天気が心配でしたが、今のところ雨が降る気配はなさそうで、あとで新十津川駅から滝川駅まで歩く予定ですから、それまでなんとかもってほしいところです。



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新琴似駅から先で地上へ下りて、住宅街を走ります。

屋根に煙突のような突起物が付いている住宅があちこちで見られます。

かつては薪ストーブで焚いていたと思われますが、今は石油ストーブの時代、こうした煙突は何に使われているのでしょうか。




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石狩川を渡り、当別町に入ると、住宅が一気に少なくなり、代わって農地が広がります。

それでも利用者は多く、車内には高校生を中心にどんどん乗ってきます。

7時38分、石狩当別駅に到着。

対面に、7時45分発、新十津川行きのディーゼル車1両が停まっており、多くの乗客がそちらへと集中的に流れていきました。




列車は次の北海道医療大学駅で半分以上が下車していきました。

沿線には学校関係の施設が多いことから、「学園都市線」という愛称が付けられています。

そういえば、先ほどもあいの里教育大という駅もありましたね。

で、残ったのはなぜか男子ばかりの高校生と私のような観光客が大半を占め、地元客は僅かでした。

電化区間はここまでで、この先は非電化区間となります。





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無人駅には、列車の車両のような形をした駅舎兼待合室があり、JR北海道無人駅らしさが出てきました。

しばらく小高い山地林の中をゆっくりとした速度で進み、8時20分前に石狩月形駅着。

ここですべての高校生たちが降りていきました。

なお、当列車は反対列車との待ち合わせのため、20分も停車します。




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月形町の中心駅で、駅周辺を見回す限り、住宅街が広がっています。

3日前の6月18日に、月形町も廃止を表明したことから、廃線後、高校生たちの通学はバスに代わるでしょう。

それと同時に、2年後には列車が通る風景が二度と見られなくなると思うと、淋しさが募ります。




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車内に戻り、乗客が少なくなったところで、札幌駅で買ったお弁当「ひぐまの贅沢おにぎり」を開きます。


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中には筋子入りの鮭、カニ、帆立の入ったおにぎりに、卵焼き、がんも・インゲン・シイタケなどの煮物、そして漬物がぎっしりと詰め込まれています。

素朴でやさしい味が、朝食にピッタリでした。



8時40分に出発した列車は、再び林の中へと分け入り、しばらくして開けた土地に出ます。

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並行する道路は国道275号線ですが、そうそう、北海道は積雪量が多いためか、道路の端を示す矢印が設置されています。

冬の積雪時の北海道には来たことがないので分かりませんが、この標示のおかげで、自分の車が道路のどの辺りを走っているのか分かると思います。

これも本州ではまず見かけない光景ですね。




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9時5分、浦臼駅に到着。

いよいよここから終点の新十津川駅まで1日1往復しかない貴重な区間を通ります。



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どんな秘境路線かと思って期待に胸を膨らませたのですが、なんのことはない、水田や畑地などが広がる平凡な所をひたすら通ります。

たしかに住宅がほとんど見当たらないという点では、まず利用されないだろうなとは想像できます。

石狩川を挟んだ向こう側に、建物群が見え、函館本線の沿線だと思われますが、こちらとの格差は明らかですね。

こちらはこちらでのんびりとしていいのですが、こんな超閑散区間にまで「学園都市線」という愛称を使うのには、なにか違和感をもちます。



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終点の新十津川駅手前で、急に住宅街が現れてきました。

予定より2分遅れの9時30分に終点の新十津川駅に着くと、2人の保育園児と引率の先生、駅員さんが手を振って迎えてくれました。


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ホームには少しだけど、手入れされた花たちが、彩を添えてくれます。


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乗客が駅舎へ向かうと、園児たちがひとり一人に何かを渡していました。

たぶん、交代交代で毎日、列車で来た乗客に渡しているのでしょう。



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私も園児たちからプレゼントをいただきました。

心のこもった温かい絵が描かれたポストカードでした。

絵の輪郭や文字とかは先生たちが描いたのでしょうけど、色ぬりは園児たちだと思われます。




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1日1本しかないにもかかわらず、有人駅です。

記念品などを販売しているみたいです。




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10時の欄以外はすべて空白という究極の発車時刻表ですね。

昔、静岡県清水港線という路線が、1日1往復しかなかったらしいのですが、それを彷彿とさせますね。

もっとも、清水港線に乗ったことはないですが。


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園児たちはすべての乗客にポストカードを渡し終えると、すぐに先生たちに連れられて保育園へと戻っていきました。

駅員さんが外の花壇に水やりをし、賑やかな雰囲気から風が吹く音のほか、静寂な雰囲気へと変わりました。

列車は10時に折り返しますが、私はここでお別れをし、5kmほど離れたJR滝川駅へと向かいます。(続く)