津軽鉄道1
次の津軽中里行きの列車は、10時18分発と15分後ですから、ちょうどよい接続時間です。
この列車は、毘沙門駅(びしゃもんえき)を通過し、かつては「準急」と名乗っていました。
発車時刻表が縦書き漢字で、昭和初期っぽい雰囲気を出しています。
そもそも駅舎の中自体が暗く、古びた建物と相まって、余計に昭和らしさが醸し出されている気がします。
なにしろ、予定が狂って、本来であれば、1本前の9時32分発に乗って往復するだけでしたし、五能線で深浦方面へ行けなくなった今、弘前方面へ戻る五能線の列車が、14時32分発しかありませんから、思わぬ観光時間が取れてしまったわけです。
だから、旅程がいまだにはっきりしないまま、フリーきっぷを買うことになりましたが、記念品にはなるでしょう。
客車は冬季に、だるまストーブ列車として、現在も運行されています。
車内に入ると、トイレこそ付いてませんが、両側にボックス席が配置され、景色を眺めるには好いでしょう。
還暦を過ぎた観光客ばかりが乗り、さらにアテンダントも乗り合わせました。
外は相変わらず暴風が吹きつけ、雨もそれなりに降っていましたが、定刻通り、10時23分に出発しました。
グループで配ったのは、枚数が足りなくなるからでした。
列車はしばらく更地や田んぼ、畑地帯といった寂寞な所を走ります。
どんよりとした雲が低く横たわり、雲だけ見ればまるで冬の時期に来ているかのような思いがします。
列車は毘沙門駅を通過しましたが、この付近は「鉄道林」という強風・吹き溜まりを防ぐ林が並んでいます。
「おじゃMAP」というテレビ番組で、香取慎吾が中心となって手掛けたのだそうです。
「俺ら東京さ行ぐだ」の歌詞では、散々この地方の田舎っぽさをこき下ろしていますが、もちろん本人は今でも年に2回ほど帰省しているぐらい、郷土を大切にされています。
なにしろこの強風で、いつ列車が停まるか分かりませんし、私の第一の目標は完乗することですから、優先順位としては「乗ること」が先で、「観光」はおまけみたいなものです。
列車交換による待ち合わせが終わり、私ともう1人地元民のご老人、そして運転士の3人だけを乗せて、金木駅を出発しました。
10時58分、終点の津軽中里駅に到着。
駅を出ると、雨は止んでいましたが、風が強く吹きつけ、とても長い時間居られたものではありませんでした。
駅へ戻り、11時28分発の折り返し列車を待ちます。(続く)