ゆき丸の鉄道日記

鉄道旅行や雑記を綴ります。

津軽鉄道2(津軽中里駅)

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津軽鉄道津軽中里駅には、お土産物や伝統芸能などの展示がある「駅ナカにぎわい空間」が併設されています。

中をのぞくと、奥の方で何やら鳩首会議(きゅうしゅかいぎ)みたいなのが開かれていて、聞くとどうも中泊町のこれからについて話し合われていました。

出席者はみな老人ばかりで、若い人が1人もいないというのもよく見かける光景です。

左手には、「金多豆蔵(きんたまめじょ)人形劇」の展示やビデオが放送されていました。

展示の説明やビデオを見ると、金多と豆蔵の掛け合い漫才など、いわゆる喜劇に分類されるものでした。

私がその辺でウロウロしていると、その様子を見た売店のおばちゃんが声をかけ、「お茶飲んでいきますか?」と勧めてくれました。

お言葉に甘えて、湯のみに熱々のお茶をもらい、おばちゃんからのいくつかの質問に答えました。

北海道旅行をして、昨日東北に下りたこと、富山在住であることなどを話すと、

「わざわざ遠くから来てくださって、ありがとうございます。」と嬉しそうに言いました。




「せっかく来たんだから、何か民話でも聞いてってください。」と言って、今度はおばあちゃんを呼びました。

大変ありがたいのですが、私は11時28分発の列車に乗らなければならないのです、と事情を話すと、

「じゃあ、5分で終わるものにしましょう。これなんかいいんじゃない。」

と、おばあちゃんは本のページを開いて、といっても一番初めのお話なのですが、それを津軽弁で朗読してくれました。

津軽弁、分からないと思うけど、まあ気楽に聞いてみて」と促し、朗読が始まりました。

たしかによく聞いても耳慣れない言葉が次々と出てきて、さすが難解だなと思いましたが、お話の流れは把握することができました。




・・・むかしむかし、この地方にある姉妹がいて、妹は社交性に富んでいるため、周りの人からの受けが好いのですが、少し用心深いところがあるという性格。

一方、姉は反対に、内向的で大人しい性格だが、大ざっぱなところがあるという。

そういうわけですから、普段は妹の方が村人からの評判が好く、姉の方は見向きもされませんでした。

そんなある日、2人はれぞれ料理を作ることになりました。

汁物を作るということで、まずは妹。

用心深い性格もあって、とくに火の起こし方が不十分で、薪をちびちびと入れるため、火力が足りず、具が煮え切らなくて失敗してしまいます。

一方の姉は、火に薪をじゃんじゃんくべ、大きな火をもってぐつぐつと煮込むことに成功します。

これを見た村人たちは、それまで見向きもしなかった姉の良さを見直したというのです・・・




だいたいこんなお話だったと記憶していますが(違ってたらごめんなさい)、ここで言うまでもないことですが、だから姉の方が素晴らしいといった偏見を持つべきではありません。

あくまで姉妹それぞれが良さをもっているということを、このお話を通じて、知ること。

そんなことをおばあちゃんに話すと、「そうなんです!人間誰しもそれぞれ良いところをもっているんですよ」と同調しました。

おばあちゃんは小学校でも読み聞かせをしているらしく、もちろん津軽弁でされているのだそうです。

言葉の正確な意味は分からないのかもしれないけど、大まかな内容はつかめるでしょうし、方言のもつ親しみやすさ、優しさが子ども達の中に入っていくことでしょう。

方言はまさに、故郷を思う心を育てるのかもしれませんね。




それからまた雑談を交わすこと数分、あっという間に列車の出発時刻が迫りました。

「短い時間でしたけど、本当にありがとうございました。」とお礼を述べると、

「こちらこそ、どうもありがとう。これから先もお気をつけて。あ、列車なら大丈夫ですよ。ここは田舎の路線だから、ちょっとぐらい遅れても待っててくれるよ。」と、微笑みながら別れの挨拶をしました。

駅員さんも事情を把握しているらしく、「慌てなくてもいいですよ」と優しく声をかけてくれました。

この辺りは厳冬地域だからでしょうか、そのぶん、ひとの温もりみたいなものが感じられます。





11時28分発の列車は私だけを乗せて出発し、金木駅に11時41分着。


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ホームに降りると、行きの時のアテンダントさんがちょうど乗るところで、「あら、戻ってこられたんですね。これから金木の観光?ぜひゆっくりしていってください。」とにこやかに言ってくれました。


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(続く)