ゆき丸の鉄道日記

鉄道旅行や雑記を綴ります。

斜陽館、津軽三味線会館、太宰治疎開の家


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金木駅11時41分着で、次の津軽五所川原行きは13時51分と2時間以上ありますので、昼食&観光をします。

荷物をコインロッカーに入れようと財布を取り出すと、小銭が足りませんでした。

駅員さんに両替をお願いすると、「うちで預かりますよ」と勧めてくれました。

コインロッカーの半額以下の支払いで預けることができましたから、これは嬉しい。

もちろん繁忙期にはできないでしょうが、ローカル線はこんなサービスもしてくれるんですね。




身軽になったところで、2階の食堂へと上がります。


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しじみラーメンを注文しました。

しじみの出汁がスープに溶け込んで、風味豊かに仕上がっています。

あっさりな味付けで、するすると箸が進みました。


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続いて、りんご餃子です。

餡にりんごを練り込んであるのですが、こちらはほんのりりんごの風味が感じられる程度で、あとは普通の餃子と変わりがありませんでした。

平日の昼時とあって、地元客が多かったです。




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腹がくちくなったところで、金木のまちを歩きます。

幸い、雨は降っていませんでしたから、ゆっくりと町並みを見ることができました。



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まず1か所目はここ。

金木駅から徒歩7分、太宰治記念館「斜陽館」です。

旧津島家住宅で、戦後は旅館になりましたが、平成8年3月に旧金木町が買い取り、記念館としてオープンしました。

中に入ると、煉瓦造りのかまどが見え、さらに上がって、和室、囲炉裏、洋間、庭・・・など、さすが青森県下で4番目の大地主の豪邸だなと思いました。



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次に、斜陽館の向かい側にある「津軽三味線会館」に行きました。

津軽三味線は、ここ金木町が発祥の地なんですよね。

ちょうど三味線の生演奏が始まりますので、中へ入ることにします。




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プロの演奏は凄いですね。

「ベンベンベンベンベンベン」と、両手の動きが見えないぐらいに早く、音の強弱、速さ、高さも様々で迫力があります。

五大民謡のうちの何曲かと、メドレーを聞きましたが、ここまで芸を極められるのかと思うぐらいの神曲でした。

そういえば、太宰治の『津軽』の中で、この近くの弘前市について、

「芸者さんから、兄さんうまいわね、と言われたいばかりの端唄の稽古、または、自分の粋人振りを政策やら商策やらの武器として用いている抜け目のない人さえあるらしく、つまらない芸事に何ということもなく馬鹿な大汗をかいて勉強致しているこのような可憐な旦那は、弘前市の方に多く見かけるように思われる。」

と、芸事へのストイックな姿勢を評しています。

もちろん、太宰は弘前市のことを本当に悪く思っているわけではなく、愛するが故の悪口を言っているだけで、要するにツンデレなわけですね。

これを同じ津軽地方の金木まで拡張できるか分かりませんが、演奏を見聞きしていると、どうも芸事へのストイックな精神はやはり受け継がれているように思われます。



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ラストの方になると、紙吹雪が舞うという粋な演出もされ、生演奏だけでなく、ショーと化しています。

津軽三味線の世界にすっかり惹き込まれ、満足して会館をあとにしました。





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3ヵ所目はここ。

太宰治疎開の家(旧津島家新座敷)です。

終戦後、母屋(現斜陽館)は売却されたため、離れのここに一時的に疎開して、執筆活動をしていたそうです。

「母屋」と「離れ」とあるように、実は津島家の土地は現在の斜陽館からここまで及んでいたわけです。

実はここは少し前までは違うお店(クリーニング店?)だったそうですが、疎開先の家として一般公開されました。



中へ入り、入館料を支払うと、受付のおばちゃんが「今、ボランティアの人がちょうど外へ出てっちゃってすみません。あと10分ぐらいしたら戻ってくると思いますが。」と、申し訳なさそうに言いました。

たしかにボランティアの主人による解説を聞きたかったのですが、あいにく、列車の出発まであと20分に迫り、とても待つことができませんでした。

それで、おばちゃんからの簡単な説明を受けて、座敷へ上がることにしました。



母屋に比べれば、こじんまりとした印象はぬぐえませんが、それでも板の間や和室、書斎、洋間など十分な広さを持っています。

和室には、母親を看病した所や太宰が執筆活動した所もあって、テーブルの前に座れば、太宰の執筆気分を味わえます。


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それにしても、斜陽館や三味線会館ではたくさんの観光客がいたのに、ここは私以外、客がいなかったのには不思議でした。

だいたい観光バスで来る人が多かったのですから、こっちまで行き届かなかったのでしょうか。



ひと通り見終わって、入り口に戻ると、ちょうど主人が帰ってきたところでした。

何か聞きたいこととかありませんか、と訊ねてきたので、

「酒癖・女癖が悪く、『人間失格』のようなどうしようもない結末をもった作品を出し、しかも4回も自殺未遂をして結局、5回目で自殺をしているのに、なぜ太宰は人気があるのでしょうか?」

と訊いてみました。

確かにこれだけ見れば、太宰はどうしようもないダメ男だと思ったのです。

主人によれば、太宰への感じ方はそれぞれだと前置きしたうえで、作品の文章がまるで話し言葉のように親しみやすさを持っていることが一つの原因があることと話し、あとは最近刊行された雑誌に太宰の特集が組まれており、そちらを読んでみてくださいとのことでした。

なんだか狐につままれたような回答でしたが、短い時間で答えをもらおうというこちらが浅はかな考えですから、もう少し自分で掘り下げる必要があるなと思いました。



ちょっと急いで金木駅に戻り、改札口で荷物を受け取ろうとすると、駅員さんがいない。

ホームにはすでに津軽五所川原行きの列車と、反対方面の列車が停まっており、駅員さんはタブレット(通行票)を運転士さんに渡しているところでした。

駅員さんに声をかけ、荷物をもらうと、

「ちょっとぐらい遅れても待ちますから、慌てなくても大丈夫ですよ。」と、さっき津軽中里駅で聞いたのと同じことを言われました。


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車内には半分ほど席が埋まっていました。

13時51分に出発した列車は、定刻通り、14時20分、津軽五所川原駅に到着。

当初予定がだいぶ狂いましたが、津軽鉄道の完乗は果たせたし、金木での思わぬ観光もできたので良かったです。

ここから五能線弘前駅へ行きます。

しかし、午前中は大雨・暴風の影響で遅れ・運休が出てましたから、14時32分発の列車ははたして来るのか、不安でした。(続く)