あいの風とやま鉄道スタンプラリー(後編)
※路線図は、『JR時刻表5月号 2018』(交通新聞社)より引用。なお、時刻を記すと解答をさらすことになるため、ここでは伏せます。
さて、呉西地域(富山より西)の駅は終わり、残りは呉東地域(富山を含む東側)の駅巡りをします。
内訳は東富山、水橋、滑川(東滑川)、黒部、生地、入善(西入善)、泊です。
⑨ 高岡 → 富山
4両編成だが、下校中の高校生が多くなってきた。
⑩ 富山 → 生地
富山駅では9分の接続で、泊行きに乗車。
2両に減車され、車内は混みあう。
車窓から見える田んぼは、緑色の苗が膝丈まで伸びている。
1か月後には、新米が出荷されることだろう。
滑川あたりからギザギザの立山連峰が近づいてくる。
ここから魚津にかけては山並みが迫ってきており、程度の差はあれ、どこも坂だ。
混んでるのは黒部駅までで、それより先は閑散とする。
生地駅で降り、改札口に行くと、駅員さんがいない!?
どこへ行ったのかと思ったら、ホームの掃除をしていた。
駅員さんは、「スタンプ終わったら、(窓口の)近くに置いといてね」と言う。
のんびりとした雰囲気だ。
⑪ 生地 → 黒部
11分後に高岡行きに乗る。
車内はガラガラだ。
黒部駅で下車後、少し小腹が空いたので、駅前のコンビニでおやつを買う。
イートインコーナーがあったので、そこで食べる。
⑫ 黒部 → 入善
14分後に泊行きに乗車。
黒部川を渡る。
ここ数日、雨が降っていないせいか、流れは早いが、川幅が狭く底が見える。
⑬ 入善 → 東富山
気持ち的に隣の泊駅に行きたくなったが、6分後の高岡行きに乗り、8つ先の東富山駅まで戻る。
こんなに行ったり来たりしていると、車内では一応普通の乗客の顔をしてすましているが、私のスマホのGPSログをたどれば、キテレツ摩訶不思議な行動に不審者と疑われてもおかしくない。
⑭ 東富山 → 滑川
ちょうど帰宅ラッシュ時に遭い、座ることができない。
滑川駅ではかなりの乗客が降りた。
スタンプを押すと、あろうことか、向きが違う方になってしまった。
せっかくここまで慎重に向きをそろえたのに、不恰好な形になった。
⑮ 滑川 → 水橋
今回、もっとも心配なのが水橋駅である。
なにしろ、今乗っている上り列車と次の下り列車の差が1分しかないからだ。
次の列車がすぐ来てくれれば問題ないが、あいにく35分後で、もしそれに乗ったら、泊駅の窓口が閉まっている時刻で間に合わず、ゲームオーバーになる。
それはなんとしても避けたいのだが、はたしてスタンプを押して乗り換えることができるのか・・・
・・・私は可能と踏んだ。
というのも、時刻表は主要駅でない限り、発車時刻しか記されておらず、したがって、上下の列車はあくまで発車時刻の差1分であって、到着時刻は当然それより早い。
だいたい30秒とすれば、今乗っている上り列車が到着してから下り列車が発車するまで、1分30秒という概算になる。
もう1つは水橋駅のホーム構造である。
水橋駅は上下線のホームが対面に分かれる「相対式ホーム」であり、窓口は私が乗っている列車が停まるホームとは反対側のホーム上にある。
ということは、跨線橋を1回渡るだけで済むし、スタンプを押せば、目の前が下りホームにそのまま乗れるわけだ。
これでドアが開くのと同時に、すぐに跨線橋へ上がれるという算段だ。
ところが、その私の目論見はものの見事に外れてしまった。
それもそのはず、先ほど⑬の列車は2両編成で片側に3カ所ドアがある車両だったが、今乗っているのは3両編成で片側にドアが2カ所しかない。
構造が全然違うから、停まる位置もまったく異なるのだ。
階段を降りようとすると、泊方面の列車が予想以上に早くホームに滑り込んできて、これはもう間に合わないかもと半ば諦めた。
駅員さんにスタンプをお願いすると、私が焦っているのを察したのか、構内放送で「お客さんご案内中です」と流した。
お礼を述べ、泊方面の下り列車に乗り込むと同時にドアが閉まった。
水橋の駅員さんには感謝に堪えないが、こんなことで列車の遅れを生じさせるわけにはいかないと、ひとり肝を冷やした。
⑯ 水橋 → 泊
日は落ち、あたりはすっかり暗くなって3度目の黒部川を渡る頃には、西の遠くがうっすらオレンジになっているぐらいだった。
いよいよ最後の泊駅に差し掛かろうというのに、スピードはあまり落とさない。
あいの風とやま鉄道に移行してから、泊行きの列車が多く設定され、それらは中線の2番線に入るからだいぶ前で遅くなるのだが、この列車は糸魚川行きという例外で、本線の1番線に停まる。
だから、直前までスピードはそのままで、手前に差し掛かると、一気に落とすという気持ちの良い停まり方をする。
スタンプを押し、若い女性駅員さんに全駅賞の欄に印を押すようお願いをすると、じっと念入りに見つめた末、
「おめでとうございます!」
と、子どもを褒めるような言い方をして、印を押した。
⑰ 泊駅にて
これで1日でスタンプラリー全てを終えたのであるが、肝心の帰る列車が1時間も無いという、けしからぬ空き時間ができてしまった。
待合室に入ろうにも、女子高生たちがたむろしておしゃべりに興じている。
そのような状態で、たったいま、スタンプラリーを密かに果たし終えた人が入れば、不釣り合いな図になる。
だから、私は諦めて、ささやかで孤独な祝杯をしようと、外へ繰り出した。
駅前に2本の道路が延びており、私は五叉路へ行く道を歩いた。
15分ほど歩いて五叉路に着き、よさげな居酒屋を見つけ、そこへ入った。
ビールにお通し、それと、何か頼まないと悪いので、とんかつと出汁巻き卵をいただいた。
代金は、2500円だった。(終わり)