予土線
この車両は5年前にも乗車したことがあり、車内には小さくもなぜか宇宙的なフィギュアがたくさん展示されていたのを覚えています。
久しぶりの乗車なので、車内設備がどうなっているのかの異同が楽しみでもありました。
ところが、「海洋堂ホビートレイン」は検査なのか故障なのか分かりませんが、ホームに姿がなく、代わりに一般車が停車していました。
しかもこの車両は、横向きベンチタイプのロングシートが左右にズラーーっと並んでおり、トイレすら付いていないという、旅行者にとってこれ以上ないぐらい蔑ろにされたものです。
だから、昼食を腹いっぱいまで食べてしまった私は、途中でお腹を壊さぬよう祈るばかりでした。
若井駅まではのどかな盆地を走りますが、その先は山深い所に入り、やがて運転席から「ジリリリリ」と自動列車停止装置(ATS)が作動します。
当列車は行き違いのために停車し、高知方面に向かう特急列車とすれ違いました。
民家の少ない所を通り、再び四万十川と合流します。
葉は色づき始めたばかりなのに、枝についているのが少なく、枯れ木のような姿に落ちぶれています。
こんな貧相な様になったのも、相次いで襲撃した台風のせいなのでしょうが、これでは秋の最大の美景が台無しになる気がします。
時々、川の中央部に奇岩が鎮座しており、これも予土線の見所の1つです。
江川崎駅までは1974年(昭和49年)に開通した比較的新しい路線のためで、スピードの点はローカル線らしからぬ趣です。
14時20分、江川崎駅で6分停車し、「トイレをお済ませください」との車内アナウンスもありました。
私は夏に来たことがないので分かりませんが、暑い空気が外に逃げにくい盆地だなということは見て想像つきます。
この日は湿っぽい空気でしたが、ほどよい涼しさで、虫の音が聞こえるのどかな様子でした。
近永駅まで来ると、鬼北盆地に入り、平坦な所を走行します。
相変わらず、刈り取りが終わった田んぼから芽が出ており、耕しはまだなのでしょう。
一方、車内にはぼちぼち下校する高校生が乗ってきて、賑やかになってきました。
務田駅で盆地が終わり、再び山岳地帯走行しますが、急カーブや急坂が多く、次の北宇和島駅までの6.3kmを12分もかけて進みます。
そんな険しい所ですから、7月の豪雨災害でも土砂が多数流入したらしく、復旧までおよそ1カ月を要しました。
狭い土地に民家がポツポツと点在し、その背後はすぐに山林が迫っています。
15時30分、北宇和島駅に到着し、私はこの駅で下車します。