平成筑豊鉄道門司港レトロ観光線
季節運行ですから、私の完乗記録には入らないのですが、せっかく九州に来た折、どうせなら運行している間に乗りつぶそうと思い、旅行初日を日曜日に充てたわけです。
門司港駅で買った「旅名人の九州満喫きっぷ」を係員のお姉さんに提示し、判子をもらってホームに入場します。
車内にはアテンダントさんも乗り、沿線の見所を説明してくれます。
常に時速15kmと超低速走行なので、話を聞きながらでも、聞いた後でも十分に景色を楽しむことができます。
進行方向左側を見ると、広場に露店がひしめき合い、大勢の人で賑わっています。
この日は、「門司港グランマーケット」が開催されていて、昨日は強風で一部のテントが飛ばされたとかあったそうですが、今日は空模様も風もバッチリで、十分に楽しめたことでしょう。
改札は、アテンダントさんがホームに出て行います。
第二船だまりに係留している白い小船が並び、やがて列車は関門海峡に沿って走ります。
泳いで渡れそうな距離ですが、関門海峡は潮流が速く、速度はこの列車と同じでだいたい15kmだそうです。
列車の速度がゆっくりなものだから、あまり大したことのないように思われますが、後々、目の前で見せられた時は、確かに流れが速いと感じました。
そのうち関門橋が見えてきて、写真を撮ろうかと思いましたが、ピントが合わず、断念せざるを得ませんでした。
関門橋の真下あたりで、和布刈(めかり)トンネルに入ります。
この時、車内の天井の明かりで、門司港のレトロな街並みや魚たちが映し出されます。
トンネル自体はさほど長い距離ではありませんが、見るのには十分な時間でしょう。
トンネルを抜けると、左手に和布刈公園が見え、子ども達が遊んでいます。
10分の乗車で、12時50分、終点の関門海峡めかり駅に到着です。
ホーム前の入場口には、すでに行列をつくっていて、行きは比較的空いていたけど、帰りは覚悟しなければならないなと思いました。
もちろん、そのままトンボ返りするような愚かな行為はせず、次の13時40分発までに駅周辺を散策します。
散策と言っても、重いキャリーバッグをゴロゴロ引いていくわけですから、あまり遠くへは行けませんが、とりあえず、和布刈神社の方へ行ってみます。
駅前には、「EF30 1号機関車と客車1両が静態保存されています。
この客車はカフェにもなっていて、中へ入ることもできます。
海峡沿いには遊歩道が整備され、歩きながらゆっくりと景色を楽しむことができます。
先ほどのアテンダントさんが説明してくれた通り、潮の流れが速く、まるで川のように西へと進んでいます。
これでは下関との距離が短くても、もし海に飛び込んでしまえば、たちまちにして潮に飲み込まれそうな勢いです。
この遊歩道で釣りを楽しんでいる人も多かったですね。
ちょうど関門橋の下を、貨物線が通過していきました。
小型船が走っている姿は結構見かけますが、こういう大型の船が勇ましく通過していく様を見ると、なんだか貴重な光景を目の当たりにしたんだなと思います。
私が喜々と写真を撮っていると、その様子を見た釣り人のおっちゃんが、「そんなもん撮っても、いい写真にならんだろう」と声をかけてきました。
というのも、貨物船はわりと行き交いがあってさほど珍しくもないそうで、それよりはフェリーを狙った方が良いと言います。
フェリーが通過するのはいつ頃なのかと尋ねると、早朝だと応え、朝からじっとカメラを構えている人がいるぞと教えてくれました。
さすがに朝早く起きてまでフェリーを狙おうとは思わないし、そもそも県外の身にとっては、関門海峡を目の前で見ることができただけでも、貴重な経験です。
「ありがとうございました」と、またしてもお道化の挨拶をして、和布刈神社へと向かいました。
神社名にもなっている和布刈とは、「め」(ワカメ)を刈り取るという意味から来ています。
毎年旧暦の元旦に、3人の神事が松明(たいまつ)、手桶、鎌をそれぞれ持って海に入り、ワカメを刈り取って、神前に供えるという行事があります。
この和布刈神社で、壇ノ浦の戦いの前夜、平家一門は酒宴を開いたと伝えられています。
歩道は国道とつながっているわけではなく、独立したトンネルですが、エレベーターで降りていくと、海底を通行することができます。
だいたい15分ほどで渡れるそうで、本州との近さがうかがえます。
そろそろ頃合いだろうと、駅に戻ってみると、予想に反して大して並んでいませんでした。
13時40分発の九州鉄道記念館行きの列車で戻り、13時50分に到着。
降りると、やっぱり入場口は観光客(とくに外国人)でごった返して、係員が「次の便は立っての乗車が出まーす」と呼び掛けていました。