阿蘇山
阿蘇山西駅行きのバス乗り場には、いったいどこから来たのか、外国人観光客が大勢いて、すでに行列をつくっていました。
その列に並んでいると、係の人が往復きっぷの案内を呼び掛けていて、2人が応じていたので、私も便乗してあとについて行きました。
自動券売機できっぷを買い、再び列の最後尾に並び直す。
すると、後ろからヨーロッパ系と思われる若い女性が私にたどたどしい日本語で、「きっぷ売り場はどこですか?」と訊いてきたので、「あちらです」と指を差しました。
すでにバスは到着していて、列の前から順に乗り始めていましたが、この女性はなんとかギリギリで間に合い、いちばん後ろの席に座りました。
私はその女性の1つ前の、非常扉が付いた席です。
バスは中岳の方へ登っていきます。
はじめは杉林に覆われた所を通りますが、そのうち視界が開け、ススキが続きます。
さらに登っていくと、こんどは放牧された牛たちが牧草をはんでいる姿が見られ、サファリパークのようです。
バスの車内自動放送で、阿蘇山の外輪山について説明がされます。
南北25km、東西18kmという長さをもち、車内からもカルデラの広さがうかがえます。
また、米塚というミニ火山も見られます。
草千里阿蘇火山博物館前には、博物館のほか、乗馬体験もできるようですね。
何体もの馬が狭い枠の中で待たされているのは気の毒ですが、スタッフが安全に案内してくれますし、この辺りは「草千里」と呼ばれる広い牧草地帯ですから、のびのびと楽しめそうです。
そう思うと、やっぱり帰りのバスの時刻が合わないのは恨めしい気持ちになってきます。
満席だった車内は、ここで半分以上降り、代わって乗ってくる人で席が再び埋めつくされました。
ロープウェイ乗り場とありますが、2016年(平成28年)4月の熊本地震や噴火によって運休し、今年の10月に運行再開を断念、解体され、支柱だけが残る寂しい姿となりました。
風が吹きつけて予想外に寒く、すぐに中へと入りました。
バスから降りた客はみんな火口西へ向かうバスに乗り換えましたが、私はここでお昼にします。
注文したのは、だご汁定食。
だご汁とは、団子汁のことで、小麦粉を団子状に練ったものや野菜を入れ、味噌などで煮込んだものです。
外が寒いから、こういう温かいものを食べると、ほっこりしますね。
一服したところで、火口付近まで行きます。
先ほど記したとおり、ロープウェイはありませんが、シャトルバスが運行されているので、そちらを利用します。
ええ、もう座席はくまモン一色です。。。
さらに、窓にもくまモンのイラストが貼り付けられ、眺望をふさいでくれます。。。
阿蘇駅からのバスに接続していませんから、必然的に乗客数は少ないです。
この便の乗客は私1人だけでした。
13時10分に出発したバスは、荒涼とした所を5分かけて登ります。
13時15分に火口西に着き、降りると強風が吹き荒れていて、寒さがいっそう増しています。
この日はガスが発生していましたが、一部で散策することができました。
白い煙がもくもくと上がり、残念ながら底までは見えませんでした。
硫黄の臭いが漂っているため、妊婦さんや喘息持ちの人は見学することができません。
展望所から見渡すと、360度岩や石、灰色や褐色の土ばかりの荒涼とした風景が広がります。
晴れてガスも収まれば、もっと澄んだ風景が期待できるでしょう。
この日は、しかし、凄まじい風が吹きつけてずっとは居られず、観光客は皆して身を縮めて「寒い寒い」と漏らしていました。
なお、噴火した時のために、いくつか退避壕が設けられています。
ゴツゴツとしたコンクリート製で、中にはヘルメットも常備されています。
そういうのを見ると、今もしその万が一の事態が起きればと思うと、恐ろしくなってきました。
寒いし、一刻も早くここを離れたいと、わずか15分の滞在でシャトルバスに乗り、退却することにしました。
13時30分発のバスも乗客は私1人で、くまモンバスということもあってか、外国人観光客は写真を撮っていました。
阿蘇山西駅に戻った私は、館内に設けられたシアターを見たり、その辺りを散策したりして時間をつぶしました。
バス乗り場の前で待っていると、案内係の若い男性が「どうでしたか?寒くなかったですか?」と話しかけてきました。
予想外に寒かったと言うと、「なにしろ今日は5℃しかないですからねぇ。」と係員。
どうりで寒いはずだと納得。
「これからどちらの方へ行かれるんですか?」
「高森まで」
「車で?」
車ならバス乗り場で並びやしない。
「以前はここから高森までバスが出ていたんですけどねぇ」と少し反らした。
たしかにまだ運行されていれば、車を持たずに高森へ行く観光客はそちらを選択するでしょうが、どう想像しても数は少ないだろうし、実際、利用者が少なかったから廃止されたのでしょう。
義務と言うと大層なことのように聞こえますが、要は乗り残しは自分の中で許されないという気持ちから来るもので、そんな子供じみたことなど告白できるわけがありませんから、それはひた隠して、ただ「そうですねぇ」と無難な返事で落ち着きました。
そのうち14時25分発のバスがやってきて、後ろに行列ができ、どやどやと乗り込みました。
14時55分に阿蘇駅に着きましたが、結局、あと1時間、何をするのか決めてません。
さしあたり、近くに道の駅がありますから、そちらへ行ってみることにしました。(続く)