ゆき丸の鉄道日記

鉄道旅行や雑記を綴ります。

南阿蘇鉄道高森線2(高森~中松)

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南阿蘇鉄道高森線は、高森駅立野駅を結ぶ全長17.7kmのローカル線です。

豊肥本線と同様、2016年(平成28年)4月の熊本地震で被災し、中松から立野間は不通です。

幸い、今年の3月に復旧へ向けた着工式が行われ、大きく前進しました。

全線開通はまだ先の話ですが、ひとまず私は現在営業している、高森駅から中松駅までを乗車します。

出発時刻が10時ちょうどで、これが始発便。

高森線は平日3往復、土日祝日は4往復しかなく、すべて日中の運行です。








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今日は10月31日で、ハロウィーン当日。

車内はご覧の通り、レトロ調にそれ用の装飾がいっぱいです。

子供には嬉しいと思いますが、この便の客は私1人だけでした。






出発時刻が迫り、運転士さんが車内に入ってきました。

駅でロボットと怪しげな会話をしていた人です。

さっそく、あのロボットは何かと訊ねたら、あらかじめ駅事務室にあるパソコンで質問や言葉とかをインプットして、それでやり取りをしていたのだとか。

いわゆるAIではないので、インプットされてないことを話しかけても、返事はしないのだそう。

決して怪しい関係でないことが分かったところで、「旅名人の九州満喫きっぷ」を提示すると、運転士さんはハンコを持ってくるのを忘れたらしく、手書きで日付と会社名を記入しました。

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運転士さんが運転席につき、駅員さんから通行票もらい、信号を確認して「出発進行!」と勇ましく合図。

定刻通り、高森駅を出発です。






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料金表や車内自動放送は、立野行きのままですが、運転士さんが中松行きと案内します。

私は席に座らず、運転席横で前面を眺めました。

高森駅を出てすぐ、運転士さんが「左には湧水公園が見えます」と案内。

園内にはトンネルがあって、これが国鉄時代、延岡駅高千穂駅を結ぶ高千穂線とつなげる計画だったそうです。

トンネル工事中に大量の出水に見舞われ、結局計画は頓挫し、さらに国鉄から第三セクターに変わった高千穂鉄道も10年前に廃線となりましたから、幻に終わりました。

私は公園に行っていないので、せめて車内からでもと探しましたが、見つけることができず、あえなく過ぎ去ってしまいました。







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最初の駅、見晴台駅です。

2016年にCM「午後の紅茶」の舞台で、上白石萌歌さんがヘッドホンを付けて歌っていましたね。

ほのぼのとした雰囲気は、ローカル線ならでは。

駅前に1人か2人立っていて、乗って来るのかなと思いきや、どうやら「撮り鉄」の人達でした。






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第三白川橋梁に差し掛かりました。

もちろん、線内には「第一」「第二」もあり、とくに「第一」は川から線路まで高さ60mを誇る絶景スポットでしたが、震災で通れなくなりました。

せめて、白川の景色を少しでも味わってほしいと、速度を落としてくれました。

「そこのボッチを引くと、窓が開けられますよ」

丸いつまみを引っ張ると、窓が下へスライドしました。

窓から顔を出すと、川音をはっきり聞くことができました。

車内放送を通していますが、ほとんど私との会話状態です。







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列車は、南阿蘇白川水源駅阿蘇白川駅無人駅が続きます。

誰も乗ってきませんが、阿蘇白川駅ホームには花の手入れがされています。

地元の人々が手伝っているのでしょう。

駅間の線路こそ枕木が古く、草もボウボウですが、両脇のススキが列車通過時に揺られて旅情をかき立ててくれます。

映えないけど、牧歌的な味わいがありますね。






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右手に、明神池名水公園が見えてきます。

ここの湧き水を飲むと、子宝が恵まれるらしく、「誕生水」と呼ばれています。

後ろに控えている山並みは、阿蘇の外輪山です。






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一方、進行方向左手の遠くでは、野焼きが行われています。







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運転士さんは、見所に差し掛かるたびに、観光案内や徐行をしてくれて、おかげで中松駅には定時より2分遅れて到着しました。

とうとう乗客は私1人だけで、まるでタクシーの運転手と助手席との間柄でした。

でも、運転士さんと会話しながらの乗車は初めての経験でしたから、トロッコこそ乗れなくても、じゅうぶんに堪能することができました。

駅に着くと、「ハロウィーンの言葉があったよね。あ、そうそう。『トリック オア トリート』。この列車に乗った人全員に渡すことになっているから、どうぞ」

と、渡してくれたものは、お菓子の詰め合わせでした。



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本来、子供が悪戯する代わりのお菓子ですが、私も「鉄道乗りつぶし、完乗」と、やっていることは子供じみてますから、皮肉な結果とも捉えられます。

それはともかく、こんなことなら高森駅でもう少しなにか買っておけば良かったと後悔しましたが、ありがたく頂戴しました。

宿でもお菓子をいただきましたから、今日はおやつに困りません。

ただ、この運転士さんはハロウィーンなんて日本とは縁もゆかりもない行事なのにと不平を漏らしており、この点は私も同感でした。






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車両には「立野 高森」(英語の筆記体でも)と描かれており、全線開通を諦めていない姿勢が感じられます。





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運転士さんにお礼を言うと、誰も客のいない列車に乗って運転席につき、10時20分、ディーゼル車を発進させました。

これが名残惜しそうに、ゆっくりゆっくり離れていくものですから、いよいよ哀愁漂う別れとなります。

踏切を越えると、徐々にスピードを上げ、「ポーーーーッ」と警笛を鳴らします。

ディーゼル車の姿がだんだん小さくなっていき、左へと曲がって、とうとう見えなくなりました。(続く)