ゆき丸の鉄道日記

鉄道旅行や雑記を綴ります。

のと鉄道七尾線(のと里山里海号)

輪島駅前からは13時15分発のバスで、穴水駅前に向かいます。

その5分前の13時10分に、金沢駅西口行きの特急バスも出ていて、それに乗れば15時36分に着くのですが、やはり行きと同じでは面白くないし、退屈極まりません。

そこで、帰りはこの穴水駅前に行くバスと、穴水駅からのと鉄道七尾線、さらにJR七尾線に乗り継ごうという算段です。

しかも、私達が手にしている「奥能登まるごとフリーきっぷ」は、のと鉄道七尾駅まで使えます。

里山を越え、13時54分、バスは定刻通り穴水駅前に着きました。

次の列車出発まで30分以上時間がありますから、駅に付設する物産館に入って、私は能登牛を使ったコロッケ、母は暑かったのか、「ジャイアントコーン」を食べました。







イメージ 1

5分前に改札を通り、ホームに入ります。

ディーゼル車2両連結で、先頭が一般車、後方が観光車両「のと里山里海号」です。

私は以前、この観光列車に乗ったことがあり、その時は少々値が張る「ゆったりコース」でした。

今日は平日なので、「カジュアルコース」で、300円の乗車整理券を払えば、乗れてしまいます。

母はこういう観光列車に乗るのが初めてなので、ぜひ知ってもらいと思い、旅程に組み入れました。




ところが、けしからぬことに、駅前で観光バスが停まり、団体客が次々と穴水駅ホームに入ってくるではありませんか。

少なくとも20人以上はいるそうで、もしや、これから私達が乗ろうとしている観光列車を占有する気なのか。

でも、そうであるのなら、のと鉄道のホームページで事前に告知されるはずだし、先ほど改札口で駅員さんからも、「どうぞ好きな席に座ってください」と言われただけで、団体客が乗るとは聞いてない。

「別に乗れなくてもいいよ。普通の列車の方が安いし、帰れるんでしょ」と母はあまり気にしていない様子でしたが、せっかくの機会、乗れなければ、この路線を選んだ意味が薄れてしまいます。

団体客たちはどうするんだろうと見ていたら、一般車の方に乗り込んでいきました。

結局、観光車両には私達と別の男性1人の計3人で、これに女性アテンダントさん2人が乗り合わせました。








イメージ 2

イメージ 3

さて、この「のと里山里海号」は、一般車両を改造したものではなく、まったくの新造車両で、2015年(平成27年)3月、つまり北陸新幹線の開業に合わせてデビューしました。

座席は4人がけボックス席やソファー、海向きのカウンター席など、様々なタイプが用意されていて、オレンジ色にサクラのイラストをあしらっています。







イメージ 5

サービスカウンターも付いていて、飲み物やお土産を買うことができます。





イメージ 4

また、車内には輪島塗の器が飾られたり、





イメージ 6

パーテーションには、田鶴浜の建具が使われていたりします。

こういう工芸品が散りばめられていて、見るだけでも勉強になります。








14時30分に穴水駅を出発した列車は、まずトンネルをくぐります。

このトンネル内には、のと鉄道の職員手作りのイルミネーションが飾られていて、イルカなどを見ることができます。




イメージ 7

その短いトンネルを抜けると、七尾北湾が見えてきます。




イメージ 8

この辺りの海では、牡蠣の養殖のほか、ボラ漁も盛んに行われ、櫓(やぐら)が設置されています。




イメージ 9

人影が見えると思って、目を凝らしていると、「櫓の上に乗っておりますのは、ただの人形でございます」とアテンダントさん。

本物ではないにせよ、こういう漁が伝統的に行われていたことは、勉強になりますね。





イメージ 10

その櫓のずっと手前で、農家のおばあちゃんがこちらに向かって、手を振っていました。

アテンダントさんによれば、観光列車が通過する時はいつも手を振ってくれるとのこと。

なんだか心温まるおもてなしですね。






イメージ 11

鹿島神社が近づくと、列車は最初の停車駅、能登鹿島駅です。

駅舎は小さくて可愛らしい、ピンクの洋風で、ホーム沿いにはソメイヨシノが植えられています。

今はすっかり枯れ木になってしまっています。

それにしても、駅舎にはスズメバチがウヨウヨと飛び回っていて、降りるのに勇気がいりそうな所でした。







イメージ 12

能登鹿島駅を出発し、次に海越しに見えてきたのは、能登島です。

「ツインブリッジのと」がかかっていて、島の奥の方に「のとじま臨海公園水族館」があります。

時々、イルカが湾内を跳ねていることがあり、見えるかなと思って期待しましたが、何も姿を現すことはありませんでした。






イメージ 13

14時48分、西岸駅です。

「小牧風」という愛称が付いていますが、それよりも2011年(平成23年)4月に放送されたアニメ『花咲くいろは』に出てきた「湯乃鷺」の方がすっかり知れ渡ってしまいました。






イメージ 14

イメージ 15

西岸駅を出ると、入り江に差し掛かりました。

牡蠣の養殖場にもなっています。

また、家の屋根瓦が黒いのも特徴で、能登瓦と言うそうです。

山陰本線から見た赤褐色の「石州瓦」ほど派手さはありませんが、艶のある気品あふれた瓦ですね。

この先はアスナロの木々が続き、抜けると能登中島駅です。

全国に2両しかない郵便車「オユ10」が留置されていて、中も見学できるようになっていますが、この列車はすぐの発車でした。

一般車にわんさかいた団体客はここで降りて行きました。





イメージ 16

イメージ 17

笠師保駅から和倉温泉駅にかけては、田んぼや船尾潟など肥沃な土地を走ります。

15時17分、七尾駅に到着です。

列車から降りるなり、母は「どうもありがとうございました。私、こういう観光列車初めて乗ったんです」とアテンダントさんにお礼を言いました。

「こちらこそ、どうもありがとうございます、またぜひいらしてください」と笑顔で、私達を見送ってくれました。








イメージ 18

帰路が楽しめるのもここまでで、七尾駅からは平凡極まりないものへと変わります。

15時26分発、特急能登かがり火8号で金沢駅へ。

家に着いたのは、午後6時過ぎでした。

個人的には、輪島旅行はかなり質のいいものとなりましたが、母は果たしてどう感じたのか。

わざわざ感想を訊ねるなんてのは野暮ですから、黙っていることにしました。(続く)