長良川鉄道越美南線2(郡上八幡~北濃)
11時21分までおよそ35分待ちのため、駅舎内のベンチに座って時間をつぶすことにしました。
隣接するカフェの店員さんが店内のみならず、改札口付近も掃除をしています。
いつも綺麗にして、利用者が気持ちよく迎えられるようにするのでしょうね。
下車客の方が多く、車内には乗った人と合わせて5人ほどです。
吉田川を渡り、列車は長良川のほとりをのんびり走ります。
川の底は浅そうだけど、流れは速いです。
美濃白鳥駅を過ぎると盆地が終わり、左右両側から長良川に向かって山が迫ってきました。
12時4分、終点北濃駅に到着です。
ホームも含めて残雪を被っています。
ここに立つと寒くて、いかにも山奥の駅という趣です。
裏側には、蒸気機関車の向きを変える「転車台」があります。
1902年(明治35年)、アメリカン・ブリッジで製造されたもので、当初は岐阜駅で使われました。
1934年(昭和9年)、旧国鉄越美南線が当駅まで延伸開業されたのを機に移設され、1960年(昭和35年)まで使われました。
その後は長らく使わない(使えない)状態が続きましたが、2002年(平成14年)に、地元住民たちによって結成された保存会が、再び動かせる状態に整備したそうです。
そして、2005年(平成17年)、国の登録有形文化財に登録されました。
興味のない人にとってはどうでもいいかもしれませんが、こうした遺構が存在することで、往時の姿をより具体的に想像することができますから、近代歴史の貴重な財産です。
線路はホームより少し先まで延びていますが、民家が立ちはだかり、つながるのはもはや絶望的です。
実は、美濃白鳥駅から九頭竜湖駅までは季節限定で路線バスが走っていましたが、2002年(平成14年)に廃止され、通り抜けができなくなりました。
木造平屋建てで無人駅です。
隣には、「花まんま」という食事処があり、次に乗る折り返し列車が13時11分ですから、ここでお昼をとることにします。
中はやや狭く、中年男性2人と、別の男性1人、それから中年夫婦が食事していました。
外がうすら寒かったから、暖房が効いた店内はより温かく感じます。
私はとりあえず道路側の席に着き、注文が来るのを待ちました。
が、厨房にいる2人のおばちゃんは忙しく動いていて、とてもこちらに来てくれる雰囲気ではありません。
もう少し様子を見ていると、1人の男性客が直接おばちゃん達の所へ行き、五平餅を注文してお金を払っていました。
この店はそういうシステムなのかなと思い、私も先客と同じようにしました。
メニューは「鶏ちゃん焼き」「ケーちゃん定食」や、焼きそば、うどん、そばなどが並び、4年前に来た時はうどんを食べましたから、今度は「ケーちゃん定食」にしました。
たぶん「鶏ちゃん焼き」の定食バージョンと思われますが、念のためおばちゃんに訊ねてみると、やはりそうで、岐阜の郷土料理とのことでした。
「12時40分の(列車)で帰るの?急いで作るよ」と言われ、その後の列車に乗ることを伝えると、少し安堵した様子で「じゃあゆっくり作れるね」と言って、また奥へと行きました。
とはいえ、そう遅くもなく料理が出てきました。
真ん中の熱々プレートの上に、ニンニク風味の鶏肉と野菜がジュウジュウ音を立てて、食欲をそそります。
鶏肉がモツみたいな食感だけど、ニンニクの風味は強くなく、あっさりとした味わいです。
ご飯、味噌汁、おでん、おひたし、漬物、そしてキウイも優しいおふくろの味って感じでした。
一方、白いCDプレーヤーから、橋幸夫「恋のメキシカン・ロック」など演歌が流れ、なにか実家にいるような安心感をもたらします。
その周りにもいろんなCDが並べられ、よく見てみると、どうもやはり演歌関係でした。
食事が終わってお膳を片付けようとすると、「あ、いいよ。そのままで」とおばちゃん。
ご馳走様でしたと挨拶だけして、外に出ました。
以前来た時は、うどんをかきこんだ後、すぐに折り返しの列車で帰ってしまいましたが、今日はもう少し時間があるので、駅周辺をゆっくり見渡してみます。
平地がほとんどない谷間で、道路脇に細長く住宅が並んでいます。
駅横に駐輪場もあったので、学生の利用はあるのでしょう。
しかし、歩いている人は皆無で、代わりに車(特にトラックなどの物流業者)は容赦なく通り過ぎていきます。
まあ、鉄道で観光に来る人の方が少数派ですが。
川にはサギが数羽飛んできました。
エサを捕まえるのか、憩いの時間なのかはっきりしませんが、私が見たときはあまり動きませんでした。
こちらは駅構内から少し民家に入った所の柿の木で、まだ実をつけていました。
これはまだ食べられるのでしょうか。
踏切が聞こえ、1両のディーゼル車がホームに入ってきました。
日が出ているとはいえ、やっぱり寒いから、そろそろ折り返し列車に乗りましょう。(続く)
※「花まんま」は、2018年(平成30年)12月21日(金)をもって閉店されました。親しみやすいお店の雰囲気や温かくてやさしいお料理の味は、私にとって忘れられない思い出です。本当にありがとうございました。