小湊鐡道
上総中野駅から、小湊鐡道14時4分発、五井行きに乗車です。
1両ですが、運転士のほか、車掌も乗務し、20名ほどの乗客に乗車券の販売など検札業務を行いました。
上総中野駅を出発し、しばらくは民家が散見されますが、やがて人気のない所に入り、いくつかのトンネルをくぐります。
そのうちの板谷隧道(ずいどう)が、千葉県内のトンネルで最も標高が高いです。
14時12分、養老渓谷駅に着き、降りて行く人もいれば、乗ってくるお客さんもたくさんいました。
養老渓谷や栗又の滝へ行く(行った)のでしょう。
私もどちらかに行ってみたかったのですが、次の五井行きが16時33分までなく、そうなると乗れたとしても五井駅到着が17時38分と途中で日没を迎えてしまい、小湊線の景色が楽しめなくなります。
傍から見れば、そんな莫迦(ばか)なことでせっかくの観光地をふいにするのかと思われますが、どうもこの「鉄道旅行病」に罹患すると、観光より鉄道に重きを置きたくなる症状が顕わてくるものですから、始末が悪いです。
養老渓谷や栗又の滝は次の機会に譲るとして、そのまま乗り通します。
蛇行する養老川に沿ったり、鉄橋で渡ったりしながら徐々に下っていきます。
小湊線から眺める養老川は決して綺麗とは言えませんが、くっきりとした青空と低い山の景色が補って、トータルとして美しく見えます。
徐々に土地が開けてくる頃、車内の暑さに耐えきれなくなって、もうダメだ、いったん休憩しようと思い立ち、14時48分、上総牛久駅に途中下車です。
車内の暑さにさんざん苦しめられたから、外の寒さがオアシスのように感じます。
当駅から五井方面への列車の本数は多く、次の五井行きが15時30分発で、これは当駅始発です。
それまでの時間は、例によって町散策をします。
首都圏にありながら、こういう貴重な遺産があるから、観光客に人気なのでしょうね。
そういえば、先ほどトンネルの上からや沿道からも写真を撮っている人がいました。
閑散とした駅前通りを歩きます。
この駅前通りは、毎月3と8の付く日に「朝市」が開催されています。
左のお食事処には、本日は貸切予約のため一般営業はしないとの貼り紙がしてありました。
国道を右へ曲がり、川の方へと降りて行きます。
川沿いを歩けるかなと期待しましたが、残念、歩道はありませんでした。
駅から歩いて15分、戻る時間のことも考えれば、引き返さないといけません。
空を見上げると、ちょうど成田空港を出たばかりの飛行機が飛んでいました。
これといった収穫はないまま駅に戻りました。
まあ、元々休憩するために降りただけですし、何かおもしろいものが見つかればラッキーですから、肩を落とすこともありません。
その代わり、こんど乗るのが当駅始発なので、乗客数が少なく、乗務員室後ろの席に座ることができました。
やがて運転士さんが乗りこむと、右のハンドルをガラガラと回し、狭い運転席に座ります。
乗客も観光客はおらず、地元民5,6人ほどが、まばらに座りました。
童心に返った気持ちで前面展望を楽しんでいると、やはり側面から見た景色とは違うなと感じます。
とりわけ遮断機のない踏切や駅全体、対向列車とのすれ違いの様がはっきりわかり、なかなか愉快です。
もうすぐ平成が終わるのに、古い駅舎に、歪んで見える線路、古い単行ディーゼル車を見ていると、平成どころか昭和の息吹さえ感じます。
15時57分、終点の五井駅に到着。
これでいすみ鉄道と小湊鐡道は終わりです。
大した観光もせず、結果的にほとんど鉄道に乗っただけという格好になってしまいました。
もちろん、いすみ鉄道では国鉄型ディーゼル車による急行列車に乗れたし、小湊鐡道では前面展望を楽しめましたが、それは鉄旅という特殊な領域での話で、やはり何がしかの観光地には行きたかったとの心残りはあります。
しかし、逆に言えば、それは新たに再訪する理由ができたということでもあります。
そういう願いを持ち続ける限り、旅行はまだまだ続けられそうです。
逆に、飽きてしまえば、旅はそこで終了。
2018年(平成30年)中に、目標としていた鉄道完乗(但しケーブルー化を除く)を果たすことができ、もう「乗りつぶす」ためだけの旅行をする必要は自分の中にはありません。
これからは、違った形での旅を楽しみたい。
そんなことを思う平成最後の年末でした。(続く)