ゆき丸の鉄道日記

鉄道旅行や雑記を綴ります。

室蘭本線5(小幌駅)

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13時8分に東室蘭駅に帰ってきた私は、駅前のラーメン店で昼食をとります。

駅弁「母恋めし」を買っておきながら、ラーメンにも手を出すなどけしからぬことかもしれませんが、塩ラーメン1杯だけなら、私の胃袋も許してくれるでしょう。



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13時40分発、函館行きの特急スーパー北斗12号を見送り、13時55分発、長万部行きの普通列車に乗ります。

乗車人数は20名程度で、うち半数が高校生でした。




これから私が向かう駅というのは、鉄道ファンの中でも秘境駅として知られる「小幌」という駅で、この駅にたどり着くには室蘭本線普通列車しかないらしいのです。

私自身、秘境駅巡りとかはあまりしないのですが、計画を立てていた時にたまたま小幌駅に寄れることに気が付き、せっかくだからということで、スケジュールに組み込みました。

車内には、やはり私と同目的をもつと思しき人が何名か見受けられました。





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東室蘭駅を出発した列車は、進行方向左手に新日鉄住金製鐵所の工場地帯を脇に通ります。

先ほどの支線区間よりも近く、はっきりと見えますね。




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その工場地帯が終わると、天然の良港、室蘭港です。

工場の目の前にあって海運輸送は有利ですね。

遠くに室蘭市街地につながる「白鳥大橋」が架かっていました。




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列車はこの先、内浦湾(噴火湾)に沿ってぐるりと進んでいきます。

目の前が砂浜、反対側は鄙びた漁村があって、こういう風情ある趣を味わえるのは、のんびり走る普通列車ならではですね。



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北舟岡駅は、目の前が海という珍しい駅です。

茶色く濁った海が白波を立ててホーム下へと押し寄せてきます。

これだけ近いと、ホームから釣りができそうですね。




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さて、ここで待ちに待った「母恋めし」を開きます。

この駅弁は、室蘭郷土料理コンクール最優秀賞受賞「母恋めし」をもとに、お母さんの味を大切にしてつくられました。

桜色の風呂敷をほどくと・・・


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このような紙の包みが現れます。


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紙の包みを解き、さらに容器のふたを開けると、中身が現れます。

ホッキ貝を使ったおにぎり2つに、燻製たまご、スモークチーズ、漬物とハッカ飴が入っており、酒のつまみにピッタリだなという印象でした。

ホッキ貝のコリコリとした歯ごたえのある食感が、味付けご飯とマッチしています。

燻製たまごは、ほろ苦くも深みのある味が広がりました。






豊浦駅で地元客は降りていき、残った人たちは私を含めて、どう見ても小幌駅を目指しているように思われました。

内浦湾と分かれて礼文駅から山の中へと入っていきます。

礼文華トンネルを抜けてすぐ、小幌駅に15時13分着。

私を入れて8名が下車しました。



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ホームは仮乗降場のような簡素なつくりで、有効長がおそらく1両分しかない短さです。



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ホーム下には幅の狭い川が勢いよく流れていて、常にザアーーっと音を立てています。

その先に内浦湾があり、そこへ一気に注ぐのでしょう。


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どうも内浦湾の方へは山道があるようで、冒険心をくすぐらせますが、万が一、ヒグマにでも出くわして襲われたらたまったものじゃないので、周辺探索はやめました。




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反対側は山で道らしき道は見当たりません。

もちろん、人家もありません。



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三方が険しい山に囲まれ、かつ残りの一方も海ですから、さながら天然の要塞という印象が強いですね。

これじゃあ、鉄道でしか交通手段はないのも納得できます。




小幌駅は、もともと列車交換のための信号場として開設されました。

当時、単線だった室蘭本線に途中どこで交換するかを検討した結果、勾配の緩いこの地を選んだそうです。

信号場の時から旅客扱いはしていたそうですが、1987年、国鉄分割民営化と同時に、駅に昇格し、正式に旅客営業するようになりました。

たぶん駅に昇格した当時はまだ利用客もいたのでしょうけど、現在ではご覧の通り、住人はおらず、旅客営業していったい何のメリットがあるのだろうと思われます。

このため、経営状態の厳しいJR北海道は駅の保守費用をカットしたいとの思いから、廃止を検討していますが、地元の豊浦町は秘境駅という観光資源を生かしていきたいとの思いで、当面は存続するとのことです。




やがて、新辺加牛トンネルからポーッ、ポーッという音が聞こえ、次に「列車が来ます。危険ですから、離れてください。」という警告アナウンスが流れ、構内踏切の遮断機が下りました。

すると、周囲を見学していた人たちは、来たる列車を写真に収めようと一斉にスタンバイしました。



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トンネルから東室蘭の方へ向かう貨物列車がひゅっと姿を現し、力強い速さで小幌駅を通過し、またトンネルへと吸い込まれていきました。




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それから少し経って、またトンネルから音が鳴り、踏切の遮断機が下りると、今度は特急列車が「ピーーッ」と警笛を鳴らしながら、高速で通過していきました。

秘境駅とはいえ、室蘭本線は特急や貨物が頻繁に通る大動脈路線ということを思い出させます。


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さらに反対方向からも、函館方面へ向かう特急列車が来て、やはり大きな警笛音を鳴らし、「ブルルンッ!」とエンジン音をうならせながら、もの凄い速さで通過し、またトンネルへと入っていきました。

あまりにも速いから、特急列車の乗客は、まさかこんな所に駅があるなんて分からないでしょう。





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ホームには陽が強く差し込むほどまぶしく、これだけでは初夏のようでしたが、澄み切った青空に白い雲が悠々と流れ、川のせせらぎ、カッコウやウグイスの鳴き声、時折そよ風による木や葉の揺れが、春を思わせ、6月下旬なのに春と夏が入り混じっているような陽気でした。

利用客は駅周辺の写真を撮ったり、情報交換をしたりして過ごしていました。

中にはアジア系の外国人夫婦もいて、こんな秘境駅をいったいどうやって知ったのか不思議でしたが、とにかく日本は隅々まで国際化したんだなと思いました。





ホームの柵に貼り付けられている時刻表を見ると、長万部方面は1日に4本しか停まらず、普通列車だけに限れば超閑散路線の部類ですね。

次に来るのは17時33分発ですが、もちろん、2時間も待っていられません。



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それで私は(そして小幌駅に降りた客全員が)、逆方向の15時44分発に乗ります。

特急列車が停まる洞爺駅まで行き、そこで函館方面の特急列車に乗り換えて折り返すというわけです。

しかし、東室蘭方面の普通列車は2本しかないんですね~。

しかも、この15時44分発が始発で、次が19時46分、つまり最終列車は完全に夜です。

JR北海道の職員は保線とかで利用するかもしれませんが、我々一般客は誰が利用するのでしょう。




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2分遅れで東室蘭行きの普通列車小幌駅に到着し、8名全員を乗せて発車しました。

寄り道はこのぐらいにして、次は森駅から函館本線の支線(砂原線)へと向かいます。(続く)