特急いなほグリーン車
羽後本荘駅で、次の列車が13時33分と50分ほど時間がありますので、駅前の食堂で昼食。
すると、先ほどおもちゃ列車に乗っていた老紳士も来て、「あれ?さっき乗っていた方ですよね?」と声をかけてきました。
老紳士と言っても、ポロシャツにこっぱんを履いたシンプルな服装なのですが、不思議と文化的な薫りをまとっていました。
それから注文品が来るまで、この老紳士とお話をしました。
神奈川県川崎市在住で、すでにリタイアしているとのこと。
JR線はほぼすべて乗ったというほど筋金入りの鉄道ファンですが、鉄道マニアに垣間見られる幼さはどこにもなく、とても気品のある人でした。
やがて、注文した焼き魚定食が出されると、会話は止まってそれっきりになり、食べきることに夢中になりました。
一方、私がこれから乗るのは、グリーン車です。
7両編成の特急いなほ10号が入線しました。
前回は真っ青なカラーリングでしたが、今回は真っピンクです。
床がカーペットで音が立ちにくく、座席は日本海の夕日をイメージしたオレンジ色に統一されています。
この数値はおそらく在来線特急の中でも最も広いものでしょう。
仕切によって独立しているため、前の席のリクライニングによる干渉は発生せず、ちょっとしたプライベート空間を確保しています。
この仕切がかえって足を伸ばせないということも起こりますが、私はそこまで気にならなかったです。
むしろ、テーブルが肘掛けのものしかなくて小さいため、これでお弁当を食べたりパソコンで作業したりするのには向いていないように思われました。
座ってみると、造り自体は普通車の座席を大きくしただけのチャチなものですが、ゆったりとした快適性と静寂性は十分でしょう。
かように、座席そのものは素晴らしいものではありますが、しかし、時間が経つと、だんだんその感動が薄れ、次第に虚しさに見舞われました。
この虚しさは、温かいもてなしを受けた由利高原鉄道の直後だっからかもしれません。
なにしろ、指定席車とのサービスの差はこの座席と、あとはせいぜい静寂性ぐらいで、ほかは何も変わらず、これで特急料金1940円のに加えて、グリーン料金が3090円もするのですから、高いなと思います。
3090円も払うぐらいなら、少し我慢してでも指定席または自由席に乗るでしょう。
グリーン車は座席が上等だからそれでいいじゃないかと思われるかもしれませんが、この時の乗客数は私を入れても3人しかおらず、あとはみんな指定席・自由席の利用でした。
3人しかいないと、当然、車内販売も売れるはずがなく、行ったり来たりをひたすら繰り返していて、なんだか淋しい気持ちになります。
それなら、いっそのこと、ドリンクとおつまみ(もちろん「いなほ」でしか手に入らない地物)を配ってしまっていいような気がします。
今どき、飛行機や夜行バスでもドリンクサービスは付いてますよ。
さすがに静寂性を損なうわけにはいきませんから、アテンダントの乗車はなしにしても、物を配るぐらいはできるでしょう。
こうすることで、ちょっとは思い出に残るグリーン車の旅になるし、また利用してみたいと思うのですが。
どうせグリーン席も車内販売も売れないなら、配ってしまっても良いような気がします。
だって、グリーン車なんですから。
前回は山側の席のせいで、デッキに移動せざるをえませんでしたが、今回は窓側ですから、じっくり楽しめました。
(6月3日の特急いなほ号の乗車記録はコチラ → https://blogs.yahoo.co.jp/sunflat192/14471597.html)
ただし、どんよりとした厚い雲に覆われていましたが。
16時36分、新潟着。
いよいよ旅の終わりが近づいてきました。
次回で北海道・東北鉄道旅行も最後になります。(続く)