山陽新幹線、特急サンダーバード37号、あいの風ライナー5号
岡山駅16時3分発、さくら556号に乗ります。
のぞみは長い16両編成ですが、このさくらは8両編成と半分しかありません。
そんな短い編成で自由席に座れるのかと思うかもしれませんが、新大阪止まりなので、降りる人はいれど、乗る人は比較的少ないのです。
窓側の席を確保し、スマホのHPを回復させます。
当たり前と言えば当たり前ですが、在来線のようなあっち行ったりこっち行ったりせず、寄り道不要と言わんばかりに、ビュンビュン疾走します。
こういう直線的な道のりを突き進む新幹線は、やっぱり迂遠な人生を送る私に不釣り合いな乗り物だなと感じさせます。
寄り道は、すなわちある種の「モラトリアム」で、それはそれで色んな「発見」やら「出会い」があるけれど、そんなものにいつまでもこだわっていては、社会に取り残されていく気がします。
六甲トンネルを抜け、街中に出ました。
すっかり夕暮れ時で、公園で子ども達の遊ぶ姿が見られました。
ここまで来るとマンションやビルが目立ち、16時48分、新大阪駅着です。
少し早いけど、この先はもう食事する時間がないので、駅ナカで夕食をとります。
「長崎沖産 真鯖の胡麻醤油こうじだし茶漬け」というのをいただきました。
あまりお腹空いてなかったし、ちょうど魚も欲しかったので、さらさらと食べ切りました。
どういうわけか、私が入店した後、それにつられるかのように、どんどん他のお客さんも入ってきました。
しかも新幹線からの乗継割引が効くので、なかなかお得です。
外はもう暗くなっていて、ビルや住宅など無数の明かりが点いていました。
18時9分、京都駅でもあまり客が乗ってきませんでした。
だから、あまり窮屈な思いをしないはずなのですが、どうも朝からずっと乗り続けてるせいか、そろそろ疲れがにじみ出てきました。
隣に琵琶湖が広がっていると分かっても、暗くてなにがなんだか分かりませんから、目隠しされたのも同然です。
恐ろしいことに、こんなのがまだ3時間も続きます。
時々、デッキに移動しては軽い体操をして凌ぎました。
少し早足で移動し、今旅行最後の列車、20時23分発、あいの風ライナー5号です。
この列車は全車指定席で、乗車には300円のライナー券が必要です。
この金沢駅での乗車制度は、いまだに普及していないらしく、この制度を知らないお客さんが乗車中、検札に来た乗務員の説明ではじめて知るという姿を、ちらほら見かけます。(そして300円徴収される)
逆の立場から見れば、乗務員は金沢駅で乗ってきたお客さんにいちいちお伺いを立てなければならず、スマホのゲームに夢中になっている男に声をかけると、「いいところ」を邪魔されたのか、むっとした表情で払っていました。
でもライナーは、直通先の「あいの風とやま鉄道」が運行しているのであって、ここ金沢駅は「IRいしかわ鉄道」という別会社ですから、それは無理な話なのでしょう。
(運賃も乗り継ぎ割引が適用されるとはいえ、高くなった)
しかし、乗ってみると実感しますが、この「あいの風ライナー」は意外にもスピードを出します。
車両は521系という一般車を使用しているにもかかわらず、暗闇による錯覚のためか、特急並みに速く感じるのです。
それに比べて、このライナーは線内唯一の優等列車で、しかも直通先のあいの風とやま鉄道線にいたっては、平野部を走る恵まれた線形ですから、スピードを思う存分発揮しているように思われるのです。
実際、私の乗車区間の表定速度(停車時間も含めた速度)はおよそ80kmで、これより遅い特急列車はたくさんあります。
大阪ではあんなに晴れていたのに、北陸に戻るとこれだから、まったく天気に油断できません。
石動、高岡、小杉と停まるごとに乗客は降りて行きますが、富山駅で再び乗る人が多くなります。
県東部の人が利用するからで、普通列車も含めて、この路線の特徴です。
駅前を除いて、明かりの少ない所を快走し、21時25分、最後の降車駅、魚津駅に到着しました。
10日間にも及ぶ大旅行もこれで終わりです。
大旅行といっても、やっている時はそれほど長く感じず、あっけなかったなという印象です。
それと、今回は完乗達成に加えて、人との出会いが多く、思い出深いものとなりました。
幸い、雨は止んでいました。
温かく迎えてくれる人などいるわけがなく、ただ寒い空気が「夢の旅」から現実へと引き戻しました。(終わり)