ゆき丸の鉄道日記

鉄道旅行や雑記を綴ります。

知らない自分の面の「怖さ」

12月8日(金)から二夜連続でネットサーフィンをしてしまい、最近流行りの「睡眠負債」のせいか、今朝は非常に気だるかった。

もっとも、今日は日曜日だから、平日と違って、社会の時計に合わせなくていい。

そう思うと、朝食、洗濯、掃除を済ませた後、再びパソを付け、ネットサーフィンした。

数時間ほど溺れ、午後1時を回ると流石にお腹が空き、重い腰を上げて外出しようとすると、そういえば今度の冬休み鉄道旅行の切符をゲットしてないなぁ~ということに気付き、さらに最近、エッセイストで鉄道好きの酒井順子『女流阿房列車』が読みたいなぁと思い、昼食を済ませた後、まずは駅へ向かう次第。

窓口には女子中学生(JC)が10人ほど列をつくっていた。

おそらく中学生1日フリー切符を購入する連中に違いない。

悪いことをしているわけではないのだが、10人ほどのJC達一斉に奇異な目で見られるのがイヤだったので、隣の待合室で掃けるのを待つことにした。

3分後に空っぽになった窓口で、件の切符を注文する。




私は富山に来てから4年半経つが、毎年お盆休みと年末に3~5泊の贅沢な鉄道旅行をすることにしている。

贅沢と言っても、今話題のクルーズトレインとかグリーン車に乗るとかではなく、自分のペースで自分の乗りたい路線を思い思いに組み合わせて乗りつぶすというものである。

そうであるから、必然的に経路が複雑になり、駅員や後ろに並んでるお客さんを困らせている。

もちろん私も事前に経路と新幹線・特急列車名を記した紙を渡すようにしたり、現地で周遊タイプの切符を購入してなるべく時間がかからないようにしているつもりだが、それでも馴染みのない場所だけにわざわざ時刻表で調べたり、マルス端末に入力ミスしてやり直しをしたりしているので、15分は超える。

3年前だったか、新しく入ったばかりと思しき若い女性の駅員が奥羽本線大館駅を「えーっと・・・おおかん?」と戸惑っていた。

鉄道好きであれば、「おおだて」ぐらいの読み方はできて当たり前と思うかもしれないが、好きでもない鉄道社員が日本全国のJRの駅名を覚えるのはさぞかし大変だろうなと思った。

そんな時に、後ろで待っているお客さんは落ち着かない様子で時計を見たりウロウロしたり足で地面をトントンと鳴らしているのを見るたびに、申し訳なく思う。

まして何か用事があるわけでもなく、ただ乗りに行くだけという児戯に等しい行為だから、尚更だ。

そういえば、宮脇俊三は『最長片道切符の旅』(新潮文庫)の中で、切符購入を巡って駅員同士がいろいろ話し合い、後ろの乗客に舌打ちされ、結局4日かかって発券されたことを記している。

私がしているのはそこまでではないにせよ、阿保の行為に変わりはない。

切符をゲットし、こんな阿保らしいことに付き合ってくださってありがとうございましたという気持ちで礼を済ませたら、脱兎の如く退散した。



図書館でお目当ての本と、ついでに酒井順子関川夏央原武史『鉄道旅へ行ってきます』(講談社)も一緒に借りた。

明日から生き地獄のような長時間労働が待っているのに果たして読破できるかどうか心許ないが、とりあえずバッグの中に突っ込んだ。




午後3時を過ぎ、少し仕事しなきゃいけないなぁと思いつつもやる気が出ず、かと言って引きこもるのも気持ちが出ず、外は雲の切れ目から薄日が差していたので、昨日と同じく電車に乗ってフラッと出掛けることにした。

車内では20代くらいの綺麗な女性がスマホを窓に向けて写真を撮っていた。

最近は所謂「鉄子」がメディアに取り上げられるようになってきたから珍しくなくなったが、やはり鉄道好きの自分としては、たとえ「鉄子」でなくとも、女性が写真を撮っていることを好ましく思い、時代が進んだなと感じる。

一方で、私のような男性(イケメンを除く)が写真を撮っている姿は、傍からキモがられることが多い。

風貌のせいもあるだろうが、この差は一体なぜ生まれるのか、いまだに分からない。



富山駅で下車し、目の前で路面電車環状線を逃し、仕方無しに南富山駅前行きのボロ電に乗り、西町で降りる。

富山市立図書館で読書し、1時間ちょっとで疲れたから再び電車で家に戻る。




『女流阿房列車』より『鉄道旅へ行ってきます』を先に読んでいる。

個性の強い3名が鉄道談義を繰り広げて面白い。

関川夏央原武史は、周りに自分が鉄道ファンであることを一生懸命悟られないようにしていて、その様子を酒井順子が冷笑していた。

私自身はもうひた隠すのを諦め、周りに話を振られたら必要程度に話すことにしている。

ただ、その代わり、自分が周りにどう見られているのかを客観視するように努める。

そう思って読み進めていると、酒井順子の「男性鉄道ファンによく見られるのは、『とにかくたくさん乗りたい』『乗っていない路線をなくしたい』という、収集欲にも似た欲求」という文に、「怖さ」を感じた。

もちろん「怖さ」と言っても、霊的なものや怒り、恐喝といった類のものではない。

自分が客観視しようと努めていたにもかかわらず、知らなかった面(それもあまり良い面ではない)を指摘されたことに怖さを感じたのだ。

面識があるわけではないが、もしかすると酒井順子さん(をはじめとする観察眼の鋭い女性)には、客観視しようとしている自分のことも見抜いているのかもしれない。

男性鉄道ファンには鈍感な人が多いと言われており、自分もその仲間に入るんだろうなと、酒井さんの文章を読みながらしみじみ思った。

それはまるで、夢中になって昆虫とかポケモンを収集するために遊んでいる子供の姿を、大人が冷笑するかのように。