三陸鉄道旅行(プロローグ)
10月4日(日)から6日(火)までの3日間、三陸地方に鉄道旅行してきました。
遠方に旅行するのは、3月下旬の只見線以来です。
まだコロナは収まっていないし、10月1日(木)から「GO TO TRAVEL」が東京も適用されますから、行くかどうか迷いましたが、ほぼ平日なのでさほど混まないだろうと踏み、最終的には行くことにしました。
目的は乗り残していた三陸鉄道の宮古から釜石までの55.4kmを制覇すること。
この区間は2年前、まだ復旧していない頃に並行するバスで通っただけで、昨年3月の復旧以来、いつか乗ろうと思っていました。
なかなか休みが取れず、ずるずると引き延ばしたところに、昨年の秋に台風による土砂災害で再び運休を余儀なくされ、今年の3月に再開したと思ったら、今度はコロナ禍が直撃。
とうとう今の今まで行かずじまいとなってしまいました。
そういうわけで、9月に入って私の住む県内のコロナ状況は落ち着いてきたし、行先も流行っているわけではなさそう。
行くなら今だろうと思い、休みを取って敢行することになりました。
ルートとしては、2年前と同じ盛岡まで新幹線で行き、そこから山田線に乗って宮古に行くのが最短かつ簡単なルートですが、ささやかながら、やはり地方の経済貢献をしたいので、盛岡から山田線を使わず、IGRいわて銀河鉄道・青い森鉄道で八戸まで行って、そこから太平洋沿いに南下していくのが良いだろうと思い、遠回りだけど、そういうルートで行くことに決めました。
すると、1泊目は岩手県の久慈で、2泊目は気仙沼にするのが日程としては具合がよかったのですが、2泊目の気仙沼の宿泊地が駅から遠い所ばかりで、しかも満室という有様。
気仙沼に泊まるのは諦め、その手前の陸前高田で泊まることにしました。
どちらも宿の予約は取れ、電車のきっぷも入手しましたので、あとはよほどの自然災害に見舞われないよう祈るばかりです。
富山駅8時7分発の北陸新幹線「かがやき504号」で大宮まで乗り、大宮で10時ちょうどの東北新幹線「はやぶさ13号」で盛岡まで乗りました。
幸い、半分にも満たない乗車率でしたから、他人との接触は避けられました。
しかし、天気がイマイチで、北へ行けば行くほど雲が厚くなってきました。
予報では、岩手、青森は午後から雨で、場所によっては強く降ることもあるそう。
旅の顛末は次回以降、順次アップします。(続く)
旧北陸本線散策2(筒石~能生)
このシルバーウィークはどこの観光地に行っても混雑しているでしょうけど、やはり1日ぐらいは自分も少し羽をのばしたい。
そう思い、9月21日(月)にちょっとした旅行(というより散歩)に行ってきました。
午後2時40分。
やってきたのは、新潟県の「えちごトキめき鉄道日本海ひすいライン」の筒石駅。
当駅は頚城トンネルの中にある地下駅です。
2年半前にも行きましたが、ここからお隣の能生駅までの1駅を、海岸線に沿って歩いていきたいと思います。
ホームを出るとさっそく階段が。
これを上っていきます。
1つ目の階段を上り切り、出口を示す矢印に従って進むと、さらに手強い階段が現れました。
これを見ると、気が遠くなりそうですが、ここを上り切らないと出口にたどり着けません。
人気はまったくなく、水の音がちょろちょろと音がするぐらい。
ひんやりして涼しいですが、案外明るいので、不気味さはあまり感じません。
ようやく出口に着きました。
290段も上るのは疲れます。
駅前には1台の車のみが駐車していて、あとは何もありませんでした。
ここから港の方へ向かいます。
なかなか深い谷です。
海が見えてきました。
駅から歩いておよそ10分で港をもつ集落に着きました。
ここから遊歩道兼自転車道をひたすら歩きます。
この道はかつての北陸本線が通っており、幅やカーブの具合にその名残が見られます。
富山を出発した時は晴れていたのに、どういうわけか、ここは怪しい灰色の雲が広がり、一部は黒っぽく見えます。
そして、けしからぬことに、雨が降り出してしまいました。
雨といっても、ぱらつく程度ですが、気持ち的にすっきりしません。
とある占いでは、この日あまり良くないと出ていましたが、晴れているし大丈夫だろうと高をくくっていたら、まさかこういう目に遭うとは。
しかも、行く手の先にはカラスの大群が控えていて、こちらが威嚇または攻撃とかしない限り、襲ってくることはないでしょうけど、やはり残念な気持ちにはなります。
沿道には自生しているススキがゆらゆらと風に吹かれているのを見ると、いっそう秋の雰囲気を感じ取れます。
なぜかアジサイがまだ咲いていたり、地域の人達が育てたサルビアやマリーゴールドを見たりできるのが、散歩のいいところ。
観光地みたいな派手さはないけど、ささやかな良さを味わえますね。
なかなか官能的な名前ですが、そばの階段を上ればそれがあるのでしょうね。
今回は通り過ぎました。
少しやせていますが、コスモスも咲いていました。
レンガ造りのトンネル。
旧線らしいですね。
中は明るく、肝試しには物足りないでしょう。
右隣の国道8号線には、車がひっきりなしに行き交っています。
せっかくの4連休だから、気晴らしに出掛けたいのでしょう。
そして、私が歩いているこの道にも、意外とランナーやサイクリストの姿が見られました。
ただ、私のように歩いている観光客はまったく見当たりませんでした。
海上にいくつかの岩が立ち、中でもちょっと目立っているのは、「トットコ岩」。
「トットコ」とはこのあたりの言葉で「ニワトリ」を意味していて、ニワトリが餌をついばんでいるように見えることから、この名が付いたそうです。
道の駅「マリンドリーム能生」の駐車場には観光客の車でビッシリ埋まり、お店の前では観光客が密になっていました。
とても立ち寄れる状況ではありませんでしたから、「日陰」を好む私はそのままトンネルの闇へと進みます。
小泊地区は地滑り地帯で、かつて旧北陸本線の列車が地滑りによる土砂に乗り上げ、脱線・転覆する事故がありました。
多くの犠牲者を出し、こういう事故が多かったことから、現在のトンネルばかりの新線に切り替わったわけです。
白山神社には、茅葺屋根で歴史的な風格を感じさせる建造物がいくつもあります。
歴史資料博物館は、残念ながらこの日はお休み。
つくづくついてないですね。
弁天岩にも行ってみましたが、なぜか「恋する灯台」なんて看板が立てられていて、たくさんの観光客で賑わっていました。
お相手はいないし、行った所で灰色の雲に覆われた灯台なんぞ行く末が案じられるので、結局、行くのを止めました。
能生地区に入ると、2匹の猫がゆったりと座っていました。
色が同じだから、夫婦なのでしょうか。
午後5時、能生駅に着きました。
黒部峡谷鉄道(欅平~宇奈月)
11時46分発、宇奈月行きの列車で帰ります。
電気機関車2両に客車(普通車)13両の大盤振る舞いな編成。
それに対して、乗客は十数人と極めて少なく、私が乗車した12号車も行きと同様、貸切状態でした。
さすがに反対列車(欅平行き)は、お昼の便とあって、乗客の数はそこそこ多かったですね。
それでも空席は目立っていましたが。
13時4分、宇奈月駅に到着しました。
きっぷは改札の駅員さんから「ぜひ持って帰ってください」と勧められ、お言葉に甘えることにしました。
ゴーストタウンのような駅前は午前中と変わりません。
お客さんは地元の人らしき人が1人だけ。
平日の真っ昼間から1杯やるのは、なんとも贅沢な気分になります。
外が暑いぶん、キリッとしたのどごしがたまりません。
そして、食事は黒部名水ポークを使ったソースカツ丼とお蕎麦のセット。
これがまた美味しかったですね。
女将さんから「東京の方から来られました?」と訊かれ、
「いえ、近所です・・・」とのやりとりには、若干の気まずさが漂いました。
ま、混雑期を避けて県内観光するのが、今の自分にとって精一杯の観光貢献だと思っています。
食事の後は、街中をぶらつき、閉まっているのか開いているのかよくわからない店に入り、豆乳ソフトクリームをいただきました。
豆乳独特の濃い味わいを楽しめました。
私はいくつかの温泉に入ったことがあるのですが、全体的に熱めですね。
ぬるめが好きな私にはまだ早いようです。
街灯のてっぺんにはトロッコ列車がかたどられているんですね。
終わり。
黒部峡谷鉄道(欅平駅)
10時39分に欅平駅に着き、帰りは11時46分発の列車に乗る予定ですので、およそ1時間の空き時間があります。
その間、駅周辺を散策します。
赤い「奥鐘橋」の上から川を見下ろします。
流れが激しく、万が一あの中に入れば無事では済まないだろうと思われます。
橋を渡った先には、貸し出し用のヘルメットが置かれています。
その隣には変わった注意書きの掲示板があり、「自己責任」とあるように、命の保証はないことが書かれています。
道を覆うような姿の岩が見え、「人喰い岩」と呼ばれています。
岩から水が滴り落ちています。
当然ながら、崩れることもあり得るわけで、ヘルメット必須なのが分かります。
この先に「名剣温泉」や「祖母谷温泉」がありますが、時間がない上に、熊が出てきそうなので、ここで引き返します。
駅前に戻って階段を下ります。
猿飛峡にぜひ行ってみたかったのですが、この日はあいにく通行止め。
河原展望台へ行きます。
河原展望台には足湯が併設されていて、この時は私以外、誰もいませんでした。
こんなことはめったにない機会で、のんびり足湯に浸かりながら存分に景色を楽しめました。
頃合いを見計らってここをあとにし、駅へ戻ります。
11時46分発、宇奈月行きの列車で帰ります。(続く)
黒部峡谷鉄道(黒薙~欅平)
9時45分に黒薙駅を出発すると同時に、ホームの途中から左へと分岐する線路がトンネルへと引き込まれています。
これは黒薙川上流の発電所に向かう「関西電力黒部専用鉄道黒薙支線」で、一般客が通ることはできません。
列車は右へカーブし、黒薙川を渡ります。
左手にはシェルターが見えます。
冬期歩道で、冬の間、当路線が雪で運行できなくなるため、そこを通ってダムの方へ行き来するそうです。
笹平駅で対向列車と待ち合わせ。
一般客を乗せていない業務用列車がすれ違いました。
出平ダムが見えてきました。
険しい谷とダムの構造物が同化して、1つのまとまった景色に見えます。
こんな険しい谷によく造ったなと思いますね。
森の中に位置するため、今にもクマが出てきそうな雰囲気です。
もしクマが飛び出してきたら、この時の乗客数が極めて少ないため、私が狙われる可能性が高いです。
だから、早く出発してほしいと心の底から願っていました。
進行方向右手に、まるで垂直のように屹立する岩肌が見えてきました。
「ねずみ返し」というそうで、ねずみが登れないほど険しい様を表しています。
黒部川第二発電所が見えてきて、そこから専用線がこちらへと合流し、猫又駅です。
立派な建物(宿舎)がありますが、こちらも一般客は利用できません。
おばちゃんがトイレ掃除をしているのが見えました。
列車はさらに標高を上げながら奥地へと進みます。
10時15分頃、鐘釣駅に着きました。
鐘釣温泉があり、一般客も利用できる有人駅です。
反対列車が入ってきました。
普通車両と、窓が開閉でき、転換クロスシートを備える「リラックス車両」が連結されていました。
どうも黒部峡谷鉄道の客車は、明治期から平成期までの特徴を網羅した車両が揃っており、すなわち4人1組分の座席をもつ普通車両(明治期)、木製の4人がけボックス席をもつ特別車両(大正~昭和期)、そして転換クロスシートをもつリラックス車両(昭和~平成期)ということですが、どうでしょう?
そんなマニアックなことを思い浮かべていると、当列車はいったん後ろへと下がりました。
「スイッチバック」というやつで、ホームの先の線路が途切れているため、いったん分岐のある所までバックしてから、あらためて出発して本線と合流という形になっています。
黒部川は進行方向左手に変わりました。
これから終点の欅平まではこの図が続きます。
木漏れ日が綺麗ですね。
無人駅の小屋平駅です。
小屋平ダムが目の前です。
次はいよいよ終点の欅平です。
本線で最も長いトンネルを抜け、10時39分、欅平駅に終着です。
ホームと線路はそれぞれ1面1線ですが、非常に長いホームで、列車2本を縦列停車できるようになっています。
他に側線が数本あります。
なお、本線の先はトンネルが続き、黒部ダムの方に向かう「関西電力黒部専用鉄道」となります。
「高熱隧道」が控えており、一般客はもちろん利用できませんが、例外として限定ツアーで申し込むことはできるそうです。
抽選に当たれば通ることができます。
私は比較的近所でありながら、まだ1回も申し込みをしたことすらありません。
いつか行ってみたいですね。
改札口につながるこの坂の名前を見ると、つい某アイドルグループの名前を連想してしまいます。
お土産屋はやはりこのご時世、閉まっていました。
1時間程ありますので、駅周辺を散策しましょう。(続く)
黒部峡谷鉄道(宇奈月~黒薙)
私が住む富山県の緊急事態宣言が5月29日(金)に全面解除されました。
その5日後の6月3日(水)がちょうど仕事が休みでしたので、久しぶりに旅行に出掛けようと思いました。
とはいえ、いくら緊急事態宣言が解除されたからといって、おおっぴろげに旅行することはできません。
そこで、比較的近距離にある黒部峡谷鉄道に行って、「新しい生活」に少しでも「新鮮な風」を入れたいと思います。
駅前に出ると、本来であれば多くの人の往来と車の渋滞で賑わうはずの道路が、ご覧の通り、それらの姿はありません。
冬場などのシーズンオフであれば、こういう光景もなくはないですが、シーズン中でのこれは、異常事態であることを実感できます。
おそらく、こんなことは初めてのことではないかと思われます。
やはり観光客の姿はほとんど見当たりません。
私が乗る予定の列車は9時21分発で、宇奈月温泉駅から6分しか時間がないのですが、さすがにこれなら急いできっぷを購入しても、間に合いそうです。
2番のりばに、欅平行きの列車が乗客を待っていました。
電気機関車2両、客車13両の計15両編成と、編成両数だけをみれば東京並みに長いです。
しかし、コロナの影響で6月1日(月)に運行を開始したばかりで、かつ平日の午前中ということもあり、乗客の数は極めて少なく、私が見た限りでは計10名ほどしかいませんでした。
そういうわけで、私が割り当てられた4号車の乗客は1人で、まさかの貸切状態でした。
もとより当路線では、感染防止のために、乗客同士の間隔を空ける「ソーシャル・ディスタンス」(私はこの言葉は社会的孤立を招くことにつながりかねない表現だと思っており、「フィジカル・ディスタンス」の方が適切だと考えている)対策をしていますが、もはやそんな必要すらありません。
開放的かつ私的空間と化した車内にマスクなぞ不要で、さっそく外しました。
私は当路線に乗るのはこれで4回目ですが、貸切状態で乗るのは初めてで、適切な言い方ではないのかもしれませんが、いったいどんな乗車旅になるのか、ある意味「楽しみ」でもありました。
※前回乗った記事はこちら
列車は定刻通り、宇奈月駅を出発し、左にカーブして黒部川を渡ります。
ほぼプライベート空間なので、身体を左右に移動して両側の写真を撮るなど、子供っぽい行為もお咎めなしです。
これから終点の欅平駅までの20.1kmを、およそ1時間20分かけて進みます。
表定速度(停車時間も含めた速度)は約14kmと、自転車並みです。
黒部峡谷鉄道はトンネルや覆道(シェルター)が多く、実は車窓撮影には不向きな路線だと思います。
これは似た環境をもつ大井川鐡道井川線とは対照的だなと感じます。
また、トンネル内でもカーブはあるので、車輪の軋む音が激しく、せっかくの自動放送(県内出身の室井滋が案内)が聞こえません。
エメラルドグリーンのダム湖に朱い橋はうまくマッチしています。
やがて、洋風の建物が見えてきて、そこから引込線が本線に近づき合流すると、柳橋駅です。
関西電力関係者しか利用できず、一般客の乗降はしていません。
こういう駅が線内に6駅あります。
川の鮮やかな緑と、山の緑が合わさって、移動するごとに緑の表情が変わっていくようです。
こんな景色ばっかりでつまらないと思う人もいるでしょうけど、私は細かい変化も味わい、楽しみたいなと思います。
川の上に架かっている細い吊橋は、人間用ではなく、サルが渡れるようにしているのだそうです。
この辺りのサルは、宇奈月温泉街どころか、私の近所にまで迷い込んできたこともありますから、行動範囲が広いなと思います。
だんだんと谷の切れ込み具合が鋭くなってきました。
赤い石が見えてきましたが、「仏石」だそうです。
列車は緩やかなカーブを描いた森石駅に停車しました。
「特別車両」と呼ばれる客車が留置されていました。
「3密」のうちの「密閉」構造のため、使われていません。
業務用の反対列車との待ち合わせをしてから、発車しました。
9時44分、黒薙駅に着きました。
有人駅で、黒薙温泉があるため、一般客の乗降ができます。
が、この時は誰も利用する人がいませんでした。
列車の旅はまだ続きます。(続く)